
「家族なんて、いらない」と、ずっと思っていた。
子どもの頃、虐待を受けていた。
離婚と再婚を繰り返す母親。連れ子である私に暴力を振るう義父。
何度も殴られ、背中を蹴られ、腰を骨折したこともあった。
親が帰ってきたときの、玄関ドアが開く音が、何より嫌いだった。
廊下から足音が聞こえるたび、身構えた。
成人してすぐに、家族と縁を切って1人暮らしを始めた。
一生独身で、ひとりぼっちで生きていくつもりだった。
あなたと最初に会ったときも、本当は怖かった。
仲良くなっても、身の上話をしたら、きっと嫌われると思っていた。
けれど、すべてを話した日、私にあなたは、こう言った。
「つらかったのは、もう終わりだよ。Aさんは、これから、幸せになるからね」
「だって」と、あなたは言葉を継いだ。
「ぼくがこれから、幸せにするからね」
そんな夢みたいなこと、ありえないと思った。
でも次の週も、その次の週も一緒に出かけたいと思った。
誰とも結婚するつもりなんて、なかった。
でもあなたといると、私はなぜだか、心地よかった。
家族なんていらないはずだった。
でもあなたが「ずっと一緒にいようね」と、バラの花束と指輪を私に差し出したとき、私はなぜだか、うなずいていた。
一日の終わり、玄関ドアが開く音が聞こえる。
私は玄関に駆けていく。ワイシャツ姿のあなたの笑顔がはじける。
「おかえり!」「ただいま!」
この瞬間が、今の私にとって一番の幸せだ。
「家族なんて、いらない」と、ずっと思っていた。
玄関ドアが開く音が、何より嫌いだった。
そんな私を、変えてくれて、ありがとう。
10年たっても、30年たっても、ずっと、ずっと、ずっと一緒にいようね。
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特別賞を受賞されたご夫婦には、記念品として宇和島真珠製品を贈らせていただきました。
真珠ネックレス

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この度のラブレターが良い機会となり、これからのお二人の人生が夢と希望に満ち溢れたものとなりますよう、心からお祈りしております。