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市指定有形文化財(工芸品)
黒糸威二枚胴具足 一領
この具足は、三間土居家に伝来した甲冑である。土居清良は、大森城を本拠とする在地領主で、西園寺氏・河野氏・毛利氏等に属し、数々の戦功を挙げ、その足跡は『清良記』にまとめられている。
本具足は、東京国立博物館学芸部工芸課刀剣室長小笠原信夫氏の鑑定によれば、全身完備した戦国時代末期以来の甲冑の形式である。黒漆塗の桃の実形兜。碁石頭の白糸を素懸で綴った二枚胴で、極めて実戦的で素朴なものである。華麗さはないが、草摺と佩盾に金箔を押すなど着用者の風尚(その時代の人々の好み)がしのばれる。前立は後補のもの。
この具足は、桃山・江戸初期にかけて製作されたもので、時代の特徴と当時の三間地域、ひいては南伊予における鉄砲や長柄の槍の普及・戦闘の集団化など戦闘の模様の一端を伝える貴重な資料である。
本具足の所有者は、三間町土居中の土居享市氏であったが、昭和二五年に清良神社に寄贈された。その後、昭和六三年二月一〇日清良神社から三間町に寄附されたものである。
現在、宇和島市が愛媛県歴史文化博物館に寄託している。