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市指定有形文化財(工芸品)
金小札野蚕威具足 一領
安政元(一八五四)年水戸九代藩主徳川斉昭から、宇和島八代藩主伊達宗城に贈られた具足で、水戸藩甲冑師義徳の手になるものである。
この具足は、鍬形を持ち、大きめの吹き返しを一二〇間筋兜鉢に配し、前立は素剣・月星紋・竪三引紋の三種をその都度使用するようになっている。四段下りの錏、八段下りの胴、七段下りの大袖、六間五段下りの草摺、五段下りの佩楯などの金小札を卯花に威し、一三本篠籠手と亀甲立挙のある一〇本篠臑当を備えている。
なお、「野蚕威具足」といわれるのは、威に用いられている糸が野蚕の糸であるからである。野蚕の糸は、伸度が強く、光沢に富み、容易に染色できない特性がある。
そのほか、極端に少なくした革所には、牡丹に唐獅子の染革を用い、家地には雀に牡丹の錦を用いている。また鋲には、斉昭から贈られたものであるから、葵紋が使用されている。
この具足は、全体の形が優美で、金小札と卯花色の調和もよく、実戦的というよりもむしろ装飾性・美術性の強いのが特徴である。一名金小札卯花威具足ともいわれる。