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市指定有形文化財(工芸品)
藍白地黄返小桜染革威鎧 一領
宇和島七代藩主伊達宗紀所用の鎧で、別名「春日野鎧」といい、春日大社に奉納されている大鎧を模して、天保一〇(一八三九)年徳川将軍家お抱え甲冑師岩井与左衛門隆成の手によって作られたものである。兜は宗永の作になると伝えられる。
この大鎧は、大鍬形・瓢箪の前立(これは豊臣秀吉の千成瓢箪の一つで、現在残っているのは、これだけと伝えられている)。五段下りの錏を黒塗二二間星兜鉢に配し、六段下りの大袖、五段下りの草摺、五段下りの佩楯、これらの水牛に黒漆をかけた平札を黄に返して、藍染の小桜革で威し、弦走には竹に雀の染革を用い、それに垂を設けた喉輪形の頬当と替物の喉輪、鳩尾の板、栴檀板、格子鎖を使った義経形の籠手、甲掛のある大立挙・臑当を備えている。
また、鋲は竪三引両の紋鋲と小桜鋲、家地は紅地大和錦御紋織竹雀、吹返し、籠手、裾などの金物、革所の染革すべてが、伊達家家紋にちなんで竹に雀が描かれている。
このように、その美しさは実に絢爛豪華なものであり、新旧の形式を混用し、装飾金物を多用し、金工・漆工・染織・皮革などの工芸技法を駆使し、費用と手間をかけて作らせた、甲冑非実用時代の美術工芸品である。