本文
市指定有形文化財(絵画)
紙本金地著色花鳥図 一帖(伝狩野松栄筆二曲屏風)
金箔地に、右上方で舞う鳳と、左下手に遊ぶ凰が、対角線に極彩色で描かれている。左上方の滝を背景にして、中央へと伸びている枝には、一つ一つ丹念に胡粉を盛り上げた、直径六・五cmの大きな桜花が咲き誇り、渓流の群青が鮮やかに目を奪う。波は力強く描かれて、空間をよくひきしめている。下方には可憐なつつじ、右手はしに桐樹の一部が見えている。
鳳凰は中国において、徳の高い天子が世に出た時、めでたいしるしとして現れる瑞鳥である。古くより吉祥的図として喜ばれ、当時の武将の趣向にも合って、数多く描かれている。想像上の鳥ではあるが、絵の上では、桐と組み合わされるのが常である。
本図は、縦一七二・〇cm、横二三二・〇cmで、「めくり」として見ていたものを屏風に仕立てたものである。もとは障屏画として、大画面であったらしく、天地左右ともかなり切りつめたあとがうかがえる。桃山金碧花鳥画の好例といえよう。
同じ市指定有形文化財の「紙本金地著色高士交歓図」と同様に、狩野松栄筆と伝えられ、徳川二代将軍秀忠より宇和島藩祖秀宗が拝領した伏見城の遺物を、後に屏風に改装したものと伝えられる。
伊達家伝による伏見城の遺物、狩野松栄筆ということについては、なお検討を要するが、少なくとも狩野派系の有力画家により、描かれたものであろうと思われる。