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国指定天然記念物
八幡神社のイブキ 二本
このイブキは伊吹八幡神社の拝殿前にある二本である。向かって左側の株は幹周り四・二m。右側のものは四・八m。両者とも高さは約二〇mである。樹齢は八〇〇年を超える。これまで幾度も台風の被害を受け、枝が破損しているが樹勢はそれほど弱っていない。
社記によると、伊吹八幡神社は和銅元(七〇八)年宇佐八幡宮(大分県宇佐市)から勧請し、和銅五年八月一五日に創建したとされている。祭神は応神天皇、神功皇后、田心姫尊、端津姫尊、市杵島姫尊である。
二本のイブキは伊予守源義経(一一五九~一一八九)が社殿を造営したとき、家臣の鈴木三郎重家に植樹させたとされている。
伊吹八幡神社はこのイブキにちなんで名づけられたもので、付近の町を伊吹町という。
伊吹八幡神社には藤堂高虎奉納の絵馬がある。また、伊達秀宗(初代藩主)は神殿の屋根のふき替え、鳥居の建設などをした。さらに秀宗は太刀及び薙刀を奉納している。
八幡神社は板島郷総鎮守の氏神であった。
愛媛県下には他に、国指定天然記念物のイブキが三個所ある。
「下柏の大柏」 幹周り八・三m 高さ一五m
「北吉井のイブキ」幹周り八・〇m 高さ二〇m
「老大木柏槙」二本幹周り五・四m 高さ一六m
全国における国指定のイブキは愛媛県下のものも含めて一二個所ある。
現在日本一とされているのはつぎのイブキである。
「宝生院のシンパク」国指定特別天然記念物
所在地…香川県小豆郡土庄町
樹齢…約一五〇〇年 高さ…二〇m
幹周り…二一・三m
イブキはヒノキ科に属する常緑高木で、雌雄異株。別名をビャクシン(柏槙)、イブキビャクシン(伊吹柏槙)、シンパク(槙柏)ともいう。
沿岸地の自然林内や岩上に生え、潮風に強く幹がよくねじれる。分布は、本州の太平洋側・四国・九州・沖縄・朝鮮・中国である。
イブキは生長すると高さ一五~二〇mになる。愛媛県下では佐田岬半島にも自生している。
用途は広く、庭木、生け垣、盆栽など植栽として利用される。生け垣や庭木で有名なカイヅカイブキ(貝塚伊吹)はイブキの園芸品種である。材は非常に硬く彫刻や床柱などにも利用される。