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国登録有形文化財(建造物)
旭醤油醸造場 一棟
この建物は、明治一七(一八八四)年酒醸造場として建築され大正期に醤油醸造場に変わった。
現在も創建当時の建物が全て残って醤油醸造の施設として使用されている。
主屋は木造平屋建、切妻、桟瓦葺き、登録文化財の醸造場は土蔵造り、二階建のつし、切妻、桟瓦葺きである。主屋は花崗岩の礎石の上に建築されている。
大正期に主屋の店舗部分は改築され、正面一・二階の横長窓には鉄の格子がはめられていたが、一階部分は戦時供出により木製の格子になった。一階格子に雨がかからないように大きな庇が建物間口に設けられ、壁全体と腕木と母屋は漆喰塗りで仕上げられ、持ち送りの金物は鉄製で支えて、全体を軽く表現して美しい。内部は、土間になっていて商品の置き場と客溜まりになり、店の間と土間はカウンターで仕切られている。カウンターの前にはモザイクタイル貼りの流し台が残っていて、昭和三〇年代まで醤油の量り売りに使われていた。
流し台が使われていた時代の店の間(帳場)は畳敷きであった。
町の中心部角地に建ち、大正期の街路景観を今に伝えている。
(注)つし=農家で、屋根裏などに木を渡し、その上に簀の子や莚を敷いて造った物置場。
醤油の量り売りに使われていたモザイクタイル貼りの流し台