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妊産婦の栄養
妊娠は、これまでの食事を見直すチャンスです!
ママの健康と赤ちゃんの健やかな発育の為に必要なこと、それはママの食事です。偏った食事にならないよう、バランスの良い食事で必要な栄養を摂りましょう。
1. 妊婦の栄養
妊娠中は、胎児の発育とともに、必要な栄養素が増えてくるため食事量が増加します。
一度にたくさん食べられない場合は、間食を1回の食事と考えこの時間に足りない栄養素(食品)を摂るようにしましょう。
妊婦の栄養ポイント!
- 良質のたんぱく質を摂りましょう
胎児は細胞が増殖し、臓器や心臓、脳の神経などが盛んに形成されています。
肉類、魚類、大豆・大豆製品、卵、牛乳や乳製品を毎食しっかり摂りましょう。 - 不足しがちなビタミン・ミネラルを副菜でしっかり摂りましょう
ビタミン・ミネラルの中でも、特に「葉酸」や「鉄」は大切です。緑黄色野菜をたっぷり使った副菜で葉酸を摂りましょう。 - カルシウムをしっかり摂りましょう
胎児の歯の組織や骨格の基礎ができます。不足すると母体の骨からカルシウムがとられます。
女性のカルシウム摂取量は少なく、足りていない状況です。積極的なカルシウム摂取を心がけることが大切です。
2. バランス良い食事
1日3食、「主食」「主菜」「副菜」をそろえることで、栄養バランスがよくなります。
いろいろな食品を使いましょう。
3. 妊娠中積極的に摂りたい栄養素
野菜は、葉酸、ビタミン、食物繊維など妊娠中に大切な栄養素をたくさん含んでいます。
「具だくさんの汁物にする」「蒸す・茹でるなどでかさを減らす」など工夫し、積極的に摂るようにしましょう。
★目標摂取量:1日350g以上
緑黄色野菜 1 : 2 その他の野菜
妊娠中・産後のママのための食事BOOK [PDFファイル/3.27MB]
葉酸
葉酸は、胎児の発育に欠かせない重要なビタミンです。
妊娠初期は胎児の細胞増殖が盛んになりますが、この時期に葉酸が不足すると胎児に神経系の先天性障害が起こりやすくなるといわれます。
妊娠中には必要量も増加するので、意識して摂りましょう。
★葉酸を多く含む食品:緑黄色野菜、果物、大豆製品など
鉄
鉄分が不足すると、貧血や疲れやすい体になるだけでなく、赤ちゃんに必要な酸素や栄養を届けられなくなります。積極的に鉄分の多い食品を選びましょう。
鉄分には、2つの種類があります。吸収の良い食材を積極的に摂り、吸収率の良い食べ方をしましょう。
- ヘム鉄・・・・それだけでも吸収率が高い食材です。
- 非ヘム鉄・・・ビタミンCやたんぱく質と一緒に摂ることで吸収率が高まります。
レバーの食べ過ぎに注意
レバーは鉄分の多い食品ですが、ビタミンAにも多く含みます。
ビタミンAは体内で合成できず、胎児の発達にとって欠かせない大切なものですが、摂り過ぎると胎児への影響があります。
カルシウム
カルシウムは、胎児の骨や歯をつくるために必要な栄養素です。
不足すると、母体の骨からカルシウムが吸収されてしまうので、不足しないように気をつけましょう。
牛乳や乳製品などカルシウムの吸収率が良く、たんぱく質の多い食品を毎日欠かさず食べましょう。
カルシウムの多い食品(ビタミンDと一緒に摂りましょう!)
食品名 | 目安量 | 分量(g) | カルシウム(mg) |
---|---|---|---|
牛乳 | 1本 | 200 | 220 |
ヨーグルト | 1カップ | 90 | 108 |
納豆 | 1パック | 40 | 36 |
木綿豆腐 | 1/2パック | 200 | 186 |
カットわかめ | 大さじ1 | 2 | 16 |
小松菜 | 1/2束 | 100 | 170 |
キャベツ | 1/4玉 | 100 | 43 |
しらす干し | 大さじ1 | 5 | 26 |
4. 食事で注意したいこと
塩分
塩分をとり過ぎると、体内に水分を取り込もうとする働きが起こるため、むくみや、妊娠高血圧症候群の原因になります。
★塩分摂取量:1日6.5g未満
- カップラーメン:1個あたり 塩分6.5g以上のものもあります
- 梅干し:1個(10g)あたり 塩分1.9g
妊娠中の食べる「魚」の種類と量に注意!
魚は、良質なたんぱく質や、血管障害の予防やアレルギー反応を抑制する作用があるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)を多く含み、またカルシウムなどの摂取源で、妊婦および出産のための栄養バランスの良い食事には欠かせないものです。
ところが、大型回遊魚に含まれる水銀は、胎児の中枢神経に影響を与える心配があります。食べる「魚」の種類と量に注意しましょう。
2週間に1回 | コビレゴンドウ |
---|---|
1週間に1回 | キンメダイ、メカジキ、クロマグロ(本マグロ)、メバチ、 エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラ |
1週間に2回 | キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ(インドマグロ)、 ヨシキリザメ、イシイルカ |
※1回の食事で食べる量は80gとしています。
例えば「1週間に1回」と記載されているものを2種類同じ週に食べる場合は、1/2量にするなど工夫をしましょう。
(妊婦さん以外は普通に食べて問題ありません。)
食べ物について知っておいてほしいこと(厚生労働省ホームページ)
カフェインの摂りすぎに注意(農林水産省ホームページ)
胎児の発育を阻害する可能性があるため、摂りすぎに注意しましょう。
- カフェインの多い飲み物:コーヒー、紅茶、お茶、一部の清涼飲料水など
妊娠中は飲酒をやめましょう(e-ヘルスネット厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト)
妊娠中に摂取したアルコールは、胎盤を通って直接胎児に運ばれます。
場合によっては、生まれてくる子どもに悪影響があります。
食中毒予防のポイント!
妊娠中は免疫力が低下しています。
体調管理のため、食中毒の3原則を守り、食中毒を防ぎましょう。
- 「つけない」・・・・調理時の手洗いや食品の衛生的な取扱いに注意しましょう!
- 「ふやさない」・・・食品の温度管理に注意!できた料理は直ぐに食べましょう。
- 「やっつける」・・・食品の中心部までよく火をとおす!
リステリア菌に注意!
妊娠中は一般の人よりリステリア菌に感染しやすくなり、赤ちゃんに影響が出ることがあります。
リステリア菌は食品を介して感染する食中毒で、塩分にも強く冷蔵庫でも増殖します。
冷蔵庫を過信せず、食べる前に十分加熱し、食品は期限以内に使い切るよう心がけましょう。
5. 体重管理
体重増加が多過ぎても少な過ぎても、赤ちゃんや母体にとってよくありません。
バランスよく栄養をとって、上手に体重をコントロールしましょう。
★妊娠中は体重の管理も重要です。
まずは妊娠前の体格(BMI)を知り、適切な体重増加量を確認してみましょう。
BMI= 体重(キログラム)÷ 身長(メートル)÷ 身長(メートル)
例)身長160センチメートルで体重50キログラム場合:BMI=50÷1.6÷1.6=19.5
妊娠前のBMI | あなたの体型 | 推奨体重増加量 |
---|---|---|
18.5未満 | 低体重(やせ) | 12~15kg |
18.5以上25.0未満 | ふつう | 10~13kg |
25.0以上30.0未満 | 肥満(1度) | 7~10kg |
30.0以上 | 肥満(2度) | 個別対応(上限5kgまでが目安) |
体重コントロールのコツ
- 毎日、同じタイミングに体重をチェックしましょう。
- 毎日、食べたものをメモする。
- 散歩などで、適度に体を動かす。
- 油料理を重ねない。(例)とんかつ+ポテトサラダ ※サラダは生野菜で!
- 肉などは、脂肪の少ない部位を使う (例)脂が多い順 バラ>ロース>ヒレ等
間食の取り方に注意
おやつは1回の食事と考えるようにして適切な量や内容を意識して食べるようにしましょう。
- お菓子やジュースなどばかりにならないようにする。
- 不足しがちな栄養素(葉酸、カルシウム、鉄分、食物繊維など)を含んだ食品をとる。
- 1日に100~200kcalを目安に。
- 水分を一緒にとる。
《 約200kcal比べてみました 》
《 妊婦さんがよく食べる間食 》
6. 妊娠周期ごとの食事のポイント
(1) 妊娠初期(~4か月)
つわりのため、必要な栄養がとりにくい時期です。焦らずに、まずは食べられるものを選んで食べましょう。
極端な体重減少や脱水症状などが現れた場合は、早めに受診しましょう。
食事の摂れる方は、栄養バランスよく食べましょう。
調理の工夫を!
- 香辛料や柑橘類を使う
酸味やスパイスを使って味に変化つける。 - においをカットする
料理を冷蔵庫で冷やすと、においを抑えることができます。
(冷たいスープ・麺類・冷茶漬け、冷たいフルーツ、ゼリー等)
つわり中のむし歯に注意!
つわりで食べる回数が増えたり、歯磨きをするのが気持ち悪かったりする人は、食べた後にぶくぶくうがいをこまめにする習慣をつけましょう。
12週以降つわりが治まったら
つわりが治まると、その反動で食欲が旺盛になったり、つわりで食べられない時の生活リズムから、朝食の欠食に繋がったり、急激な体重増加の原因になることがあります。
生活リズムを改善し、1日3食バランスよく食べましょう。
(2) 妊娠中期ごろ(5~7か月)
妊娠中はホルモンのバランスの変化などで虫歯や歯周病になりやすい時期です。
歯周病などの炎症によって、早産や低体重児出産などのリスクが高まると言われています。
安定期に入ったら、母子健康手帳と一緒に交付される「妊婦歯科健康診査受診票」を使って、お口の健康を確認しましょう。
むし歯や歯周病予防のポイント
- 糖分の多いジュースやお菓子はお口の中を酸性にし虫歯の原因になります。時間を決めて、だらだら食べないようにしましょう。
- 食後の歯磨きのほか、ぶくぶくうがいをこまめにしましょう。
お腹の赤ちゃんのためにカルシウム摂取を忘れずに!
赤ちゃんの歯の元となる歯胚(しはい)と呼ばれる組織は、妊娠初期から作られます。
牛乳や乳製品などカルシウムの吸収率が良く、たんぱく質の多い食品を毎日欠かさず食べましょう。
(3) 妊娠後期ごろ(8~10か月)
これまで以上に栄養を摂りましょう!
妊娠後期になると胃が子宮に圧迫されてすぐに満腹になったり、一度に食べられる量が少なくなったりします。
食事の回数を増やすなど工夫して、必要な栄養をしっかり摂りましょう。
貧血に注意!
妊娠中の赤ちゃんの栄養は、血液によって運ばれます。
鉄分が不足すると、貧血や疲れやすい体になるだけでなく、赤ちゃんに必要な酸素や栄養を届けられなくなります。積極的に鉄分の多い食品を選びましょう。
妊娠高血圧症候群に注意しましょう
この時期はむくみや妊娠高血圧症候群になりやすい時期です。
★塩分に注意する!
塩分を控え、うす味にしましょう。だしや香辛料等を上手に利用しましょう。
★体重増加に気を付ける!
体重の増え過ぎに注意しましょう。
- 低エネルギーの食品を上手に活用する 。(大豆製品、野菜、きのこ、海藻 など)
- 油を多く使う調理方法の回数を減らす。 (揚げ物、炒め物、マヨネーズサラダ など)
- 早食いは満腹感を感じにくく、食べ過ぎの原因にもなるため、噛みごたえのある食品をゆっくり噛んで食べる。
- 糖分や油分の多いものを食べ過ぎないようにする。
- 間食に注意する。(間食を上手に摂る)
妊娠糖尿病に注意しましょう
妊娠糖尿病になると、将来、糖尿病を発症する割合が上昇する傾向があります。(正常血糖の妊婦さんに比べ7.4倍)
《 よい生活習慣の三本柱 》
- 休養(睡眠)・・・よい眠りで、生活リズムと心の疲れをリセット!
- 食事・・・・・・1日3回の食事は「質」が重要!
- 運動・・・・・・今より10分多く体を動かそう!
便秘や下痢の予防
ホルモンバランスの変化や胎児による腸の圧迫などにより、便秘しやすくなります。
《 食事のポイント 》
- 1日3食きちんと食べる。(特に朝食を欠食しない)
- 食物繊維を多く含む食品をとる。(野菜、きのこ、大豆製品、芋類、海藻類、果物など)
- 腸内善玉菌を増やす。(ヨーグルト、納豆などの発酵食品)
(4) 産後
産後、授乳中の食事は、母乳や産後の体の回復のため、妊娠前よりもエネルギーやたんぱく質、ビタミンなど多く摂る必要があります。
母乳は血液から作られ、食事内容が大きく影響します。
育児に忙しく、食事を簡単に済ませてしまいがちですが、「主食」「主菜」「副菜」をそろえ、バランスよく食べるよう心がけましょう。
エネルギーに加え、葉酸・たんぱく質・鉄・カルシウムを積極的に摂りましょう。