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市指定 ウバメガシ樹叢

印刷用ページを表示する 記事ID:0002365 更新日:2015年7月1日更新

市指定天然記念物

ウバメガシ樹叢ウバメガシ樹叢

  • 所在地 石応 堂崎
  • 所有者 観音寺
  • 指定日 昭和三六年一一月三日

 宇和島市街地から西へ五km程のところに石応堂崎がある。堂崎の樹叢はウバメガシが優占する常緑広葉樹林からなる。生育するウバメガシは老木が多く、樹齢八〇〇年を経たものもある。参道脇の老木は樹幹が傾き、幹や枝にはシダ植物のヒトツバが密生している。樹林内には枯死した株や大枝の枯れた古木も少なくない。処々にクチナシ・マサキ・トベラなどの常緑低木が混生している。

 堂崎はうっそうとした照葉樹が森をつくっている。この樹叢を構成する植物にはつぎのようなものがある。樹林の主役はウバメガシで、ホルトノキ・モッコク・ヤブツバキ・タイミンタチバナ・ヤブニッケイ・モチノキ・カクレミノ・ミミズバイなどの常緑高木が混生する。

 低木層では、ネズミモチ・クチナシ・イヌビワが目立つ。林床は陰湿で腐葉土に覆われ、植生は貧弱である。

 林縁には、アカメガシワ・ショウロウクサギ・ハゼノキ・エノキ・ムクノキ・オンツツジなどの落葉広葉樹が生える。また、ツクシハギやコウヤボウキなどの低木も姿を見せる。

 標高約三〇mの山頂部には堂崎観音堂があり、参詣する人影が絶えない。観音堂の後方には一基の五輪の塔がある。これには平家の落人にまつわる哀れな物語が伝承されている。

 その物語は――平家の残党探索のため、源氏方の五郎吉武の一隊は豊予海峡を経て九島沖で舟影を発見追跡し、堂崎に接近すると無人の二艘の舟が漂っていた。三方に分かれ辺りをくまなく捜索したが、落人はいない。探しあぐねた吉武らはお堂で昼食をとったが、その時天井の節穴からのぞく紅の布を目にとめた。こうして天井裏に隠れていた平家の幼い公達と五人の女房は捕らえられ、波打際の大岩で斬られた。すぐ近くの小高島に潜んでいた平家の落武者らは、この有様を見て一矢報いんと刀を口にくわえて堂崎目指して泳いできたが、これも源氏方の放つ矢に残らず射殺されてしまった。

 事静まって後、吉武は世の無常なるを思い幼き公達・女房らおよび討死した武者たちの後世を弔うことを決意、観音堂の後方に五輪の塔を建立、お堂に籠って念仏三昧、仏像を彫り修行を積んだ末ここで没したという。

 以後、堂崎観音の参詣には赤色系の着衣が禁忌となり、さらに堂崎の樹木は倒木であっても持ち出すことを禁じたとも伝えられている。

 ちなみに高級な白炭として名高い「備長炭」は本種の材を焼いてつくられる。ウバメガシは「宇和島市の木」にも指定されている馴染みの樹木である。