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先輩農業者インタビュー(黒澤敬子さん)
みかん学校に興味はあるけど、具体的にどんなことをするのだろう。
実際に通っている人の話を聞いてみたい……!
そういった声にお応えし、2024年4月にみかん学校に入校し、現在みかん学校に通われている黒澤敬子さんにお話を伺いました。
みかんを作ろうと思ったきっかけや、宇和島を選んだ理由など、率直なお気持ちを語ってくださいました。
- みかんが好きだから、作りたかった
黒澤さんは茨城県ひたちなか市の出身で、今年の3月末まではひたちなか市役所の職員をされていたそうです。
20年勤めた市役所を辞めてみかん農家になるというのは、かなりの決断だったはず。
「元々みかんが好きで、いつか作ってみたいと思っていたんです」
お話によると、黒澤さんの中で『いつか』という思いはありつつ、仕事の忙しさからなかなか辞めどきが見つからないでいたそうです。
そうするうちに40歳を前にして、体力的にもそろそろぎりぎりだろうと思い、決断に至ったとのことでした。
- 就農地として宇和島を選んだきっかけ
茨城県は気候的にみかん作りには適していないため、どうせなら美味しいみかんが作れるところでやりたかったのだそう。
そうは言っても、何のツテも無いまま就農するのはなかなか難しいもの。
黒澤さんは就農希望者向けのコミュニティがないか、インターネットやSNSで探してみたそうです。
「その中でJAえひめ南さんの取り組みを知り、お話を聞いたところ自分が求めていたものに近いと感じ、飛び込んだ形です」
とはいえ愛媛以外にも、みかんを作っている地域はあったはず。
そのあたりを伺ってみると、予想外のお答えが。
「近い所だと神奈川とか静岡でもみかんを作っているんですが、そこだとちょっと近すぎて、帰りたいと思ったから帰れちゃうなと」
むしろ地元から遠い場所を選んだというのには、驚かされました。
それに加えて、愛媛は若い世代以外の就農希望者を受け入れる体制があったのも決め手のひとつになったそうです。
「愛媛だと宇和島以外の南予地域も考えたんですが、宇和島がやっぱり好きだなと思ってここにしました」
元々宇和島のみかんは茨城でも見かけていて、昔から馴染みがあったと仰る黒澤さん。
大人になってからは旅行で四国に来た際に宇和島を訪れて「ここがみかんを作っている場所なんだ」という認識も持っていたそうです。
「自分にとって一番落ち着くところが、宇和島だったんですよね」
そう穏やかに話される黒澤さんが印象的でした。
- 宇和島に実際住んでみた印象は?
黒澤さんはもともと工業都市に住んでいたそうで、その頃と比べると宇和島のまちは穏やかで落ち着くなと感じているそう。
「地域性なのか、せかせかしていないですよね。毎日本当に楽しく過ごしています」
車さえあればどこにでも行けるため、不便は特に感じていないとのこと。
宇和島を気に入ってくださっているのが伝わってきて、嬉しくなりました。
「いまだに馴れないことがひとつあって、海に波がないんですよね」
太平洋に面した地域に住んでいると、海は常に波があるのが当たり前。
瀬戸内海や宇和島には湾がなく、
海の匂いがするのに波がないことに、いまだに違和感を覚えるのだと、黒澤さんは笑っていらっしゃいました。
- みかん学校ではどのようなことをしているのか?
▲実際に収穫されている様子
みかん学校は一年コースと二年コースがあるそうで、黒澤さんはじっくり学べる二年コースを選択されたそう。
一年目の今年は、学校の園地管理やみかんの育て方などを週一で学習しながら、山に登って草刈りをしたり、夏までは摘果をしたりしていたそうです。
収穫作業が始まる時期までは、地元の農家さんにお邪魔させてもらい、実習させてもらうこともあったのだとか。
収穫が始まってからは、収穫作業を学校の園地だけでなく、農家さんのお手伝いという形でいくつかの農園で収穫作業をしているそう。
「まったくの未経験で来ているもので、一日の流れや一年間の流れを座学だけでなく、実地で教えてもらえるのがとても助かっています」
やはり実際にやってみるというのが一番大切なのだなと、黒澤さんのお話を聞いて感じました。
今年はとにかく初めてのことばかりだったので、来年はもう少し先読みしながら動けるようになりたいと、抱負を語っていらっしゃいました。
カリキュラムの中で大変なことはあったかと伺ってみたところ、今年は暑かったので草刈りが大変だったそう。
「でもたいがいのことは楽しいと思う性分なので、日々楽しいです」
みかん学校の同期生がいるのも楽しいし、今後も繋がっていけるという意味でもコミュニティがあってよかったとのこと。
活き活きとお話される黒澤さんからは、充実した日々を送っていらっしゃることが伝わってきました。
- 将来の目標は?
これからの展望を伺ったところ、このまま宇和島での就農を目指しているそう。
「美味しいみかんを作るにはまだ経験が足りていないので、どんどん経験を積み重ねていきたいですね」
作りたいみかんは温州みかん。一番オーソドックスで多くの方が食べるものだからこそ、美味しいものを作りたいと仰っていました。
他にも機会があればポンカン等の中晩柑橘類にも、挑戦してみたいとのことです。
- 最後に、宇和島市への新規就農やみかん学校に興味ある方へのメッセージをお聞きしました。
「他の地域から転職して来るって、生活面等さまざまな不安があると思います。
でも未経験でもみかんを作りたいという人にとって、みかん学校はその一歩目としてなかなか面白いコミュニティだと思っています。
学校に来ている方も農家の子だったり、既に就農している方で家とは違うやりかたを学ぶために来ている方だったり、私のような未経験者がいたりと様々。
そういった人たちと知り合いながら、学ぶためのひとつの手段として使える場所なのかなと。
みかん学校はかなりウェルカムな体制なので、体験等もしてくれるはず。気になった方はぜひ一度来てみてください」
▲取材を受けてくださった黒澤さん