本文
先輩農業者インタビュー (清水実郎さん)
みかん農家に興味はあるけど、実際のところが知りたい……やりがいは? 大変なことは?
このサイトを訪れた方でそう思っている方は、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の取材では、宇和島市でみかん農家をされている清水実郎さんに、みかんづくりの本音をうかがいました。
- 祖父が始めた園地を、残さなければならないと思った。
清水さんが生まれ育った家はお祖父様の代からみかん農業を営んでいたため、ご自身も子供の頃からみかんに慣れ親しんでいたそう。
とはいえ、自分自身が農家を継ぐということは、あまり意識してこなかったそうです。
「中学生くらいの頃に祖母と一緒に山へ行って、(祖父が始めた)園地を見たのが最初のきっかけかな」
その園地は清水さんのお祖父様がみかんを作るために開拓した土地なのだと、お祖母様に教えてもらったのだとか。
その話を聞いたとき、清水さんは「なんかいいな」と感じたそうです。
「他にも園地はあるんですけど、この土地だけは残さなければいけないなと思ったんですよね」
そこからだんだん年を重ねていくうちに、
いつかは大なり小なり農家をするようになるという漠然とした思いが、清水さんの中で定着していったと仰っていました。
そうは言ってもすぐに農業を継いだわけではなく、
県外の大学を卒業後は松山と宇和島で12年ほど学校の社会科講師をされていたそう。
30歳になる節目に家を継ぐ形で就農され、今年で12年目を迎えました。
- 新規就農者に対して思うこと
「本当に偉いと思うし、凄いと思います」
開口一番にそう語る、清水さん。
家業を継いだ場合と違い、新規で参入する方は土地や農機具等を準備するところから始めなければなりません。
自分にはできないと思うからこそ、フォローしたいという思いがあるのだそう。
「分からないところとか不安なことがあったら、どんどん聞いて欲しいし頼って欲しいんですよね」
農業は同業者の経験や知恵を借りないとやっていくのが難しいため、新規就農された方はどんどん地元に溶け込んでいってほしいと、語っていらっしゃいました。
- 宇和島はみかんを育てるのにとても適した地。
清水さんが育てているみかんを伺ってみると、メインは温州系でそれ以外にもポンカン、デコポン、清見、せとかや甘平などの中晩柑類も作られているそう。
そのため収穫期が長く、9月~翌年の5月まであると仰っていました。
みかんの生産地は県外にもたくさんありますが、宇和島市ならではの特徴はあるのだろうか……そのあたりを尋ねてみると、
「うちだけではないんですが、玉津地区は凄い傾斜が急で、水はけが良いから糖度が自然に上がるんですよね」
そのため、温州系のみかんを作るにはすごい適地だと清水さんは感じていらっしゃるそうです。
宇和島のみかんが美味しいと言われるのには、こういった地の利があるのだと、改めて気づかされました。
- みかん農家のやりがい、大変なこと
清水さんの一日は、晴れていればほぼ毎日園地に行き、季節ごとの作業をされているそうです。
「摘果と収穫の時期は従業員を雇用するので、7時半くらいから山に行って、16時くらいまでやっていますね」
やりがいを感じるのはどんな時かと伺うと、
毎回計測する糖度が良い時だったり、友人等に送ったみかんが美味しいと言ってもらえたりすると、頑張ってよかったなと感じるそうです。
「友だちの子供が『美味しい』と食べている動画を送ってくれたりするんですよ」
そう話す清水さんの表情は、とても嬉しそうでした。
反対に大変だと感じるのは、傾斜での作業がきついことと、
マルチシートを地面に敷く作業があるそうで、それを巻き取る時が大変なのだとか。
「蛇が出たり、腐った雨水が出てきたりして嫌だなあと思うんですけどね。美味しいみかんを作るためには仕方ないなと思って頑張ってます」
また、意外と時間が無いなと感じていらっしゃるそう。
「休みの融通がききやすい面もありますが、何かと気になってこの日は休もうかなというのがなかなか無いんですよね」
基本的に晴れてたら毎日園地に行き、雨が降ったら選果作業。
9月から収穫が始まると年内は休まずだそうで、農業の大変な一面だなと感じました。
今後の目標や展望を伺ってみると、これからは作業効率のいい園地にしたいと考えていらっしゃるそう。
園地も広げたため各園地でどんな品種を育てるのが良いか、精査していく予定なのだとか。
「先月倉庫立てたので、ローン返さなきゃいけないので」
そう笑う清水さんは、今後をしっかりと見据えていらっしゃるのだなと感じました。
- 今後みかん農家になりたい人に向けてのメッセージ
「何度も同じことを言いますが、みかんを作りたいとここに来ことが、もう凄いんです」
新規就農者に敬意を持っているからこそ、一緒に頑張りましょうという思いがあると、清水さんは真剣に語っていらっしゃいました。
「とにかくみかん農家だけでなく、第一次産業全体に言えるんですが、人手が少ないんですよね」
人材確保は個人だと限界があるため、知り合いをたくさん作っておくことで、人手を融通しあったり、声をかけあったりするのが続けていくためにとても大切なのだそう。
「だから新規就農者の方にはやっぱり、誰でもいいから繋がりを同業者じゃなくてもいので、人脈をどんどん作ってほしいです」
農家は高齢化が進んでいるため、新たに農業を始める方は本当に宝みたいなもの。
そう話す清水さんは、行政機関や農協にも新規就農者への手厚いサポートを頑張ってもらいたいと仰っていました。
▲新しくできた倉庫と清水さん