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「コ・クリエーションによる地方創生」|第2回UWAJIMA ふるさとMeet Up【in東京】レポート 第2弾

記事ID:0046879 更新日:2020年3月27日更新 印刷ページ表示

「コ・クリエーションによる地方創生」|第2回UWAJIMA ふるさとMeet Up【in東京】レポート 第2弾の画像

12月4日に<第2回UWAJIMAふるさとMeet Up“LIVE!”in東京>を開催しました。
本イベントはうわじまシティブランディング事業の進捗報告、スペシャルなゲストによる講演をヒントに、参加者同士で宇和島の未来を共に創るにはどうしたらよいかワークショップ形式で語り合い、宇和島の魅力を再発見しながら地域課題の解決と新たな価値創造への道筋を探っていく、地域未来への対話の場です。

うわじまシティブランディング事業では、様々な調査やワークショップを通じて、宇和島の魅力づくりのために共創型関係人口による文化創造の必要性が今後の課題であることがわかってきました。

第2回となる今回は、宇和島が新しい魅力を発信し続ける文化的な街になるためにはどうしたらよいのか、関係人口を増やしていくためにはどうしたらよいのかを、参加者が考える機会としました。

この記事では、ゲスト講師、三田 愛 氏(株式会社リクルートライフスタイル 地域創造部 じゃらんリサーチセンター研究員/コクリ!プロジェクトファウンダー)によるご講演内容を紹介します。

三田氏は、2011年より「コ・クリエーション研究」開始し、全国規模のコクリ!に挑戦すべく、2014年よりコクリ!コミュニティづくりの研究を開始。地域リーダー・企業・NPO・大学・官僚・クリエイター等、多様な社会リーダー約300人のコミュニティに。現在は、地域・社会のホールシステムチェンジの研究を進められています。


三田 愛 氏
株式会社リクルートライフスタイル
地域創造部 じゃらんリサーチセンター研究員
/コクリ!プロジェクト 創始者・ディレクター

三田 愛 氏の講演の画像

自己紹介

皆さん、こんばんは。リクルートじゃらんリサーチセンターという地域活性の研究所で、研究員をしています、三田愛と言います。私は神戸出身で、時々関西弁が並ぶと思いますが、すみません。本日は私の研究の中から見えてきたことを、少しシェアさせてもらおうと思っています。

「関係人口」という言葉、元々知っていたよという方はどのぐらいいらっしゃいますか?いわゆる交流人口でもなく定住人口でもなく、その間の関係人口というのが国の中でも方針の一つになっていて、総務省・内閣府・国交省の中でも横断的に取り扱われています。

私自身はこれまで、地域と都会の関係性がどういうものであれば、地域の人にとって本当に良いものであり、そして都会の人にとっても地域外の人にとっても良いものになるかという研究を10年間続けてきました。その意味では、関係人口の研究をずっと10年間していたということでもあると思います。その観点で、「関係人口の落とし穴」に関して、そして関係人口施策をする上で、地域にとって都市にとって大切だと思うことについてお話していきたいと思います。

自己紹介の画像

簡単に自己紹介を。ずっとリクルートに在籍していています。人材系の部署や人事が長くて、その後、海外提携とか新規事業開発のプロジェクトマネージャーをしたので、3年ぐらいたっぷりビジネス系も経験しつつ、育児休職中にコーチングの資格を取り、その後、じゃらんリサーチセンターの研究員で、コ・クリエーションの研究をしています。経産省や、最近は国交省の委員も務めていて、それも「関係人口」に関する委員です。プライベートでは東京と葉山の2拠点でシェアハウスをしていたり、10歳の子どもがいたり。あと書道を30数年間ずっと続けています。

コクリ!プロジェクトとは

「コクリ!プロジェクト」とは、「コ・クリエーション」の「コクリ」から取った名前で、私が創始者として運営している研究コミュニティです。「コ・クリエーション」というのも聞き慣れない言葉かもしれないのですが、「コラボレーション」と似て非なるものだと思っています。コラボレーションとは、いわゆるAとBの今あるリソースを組み合わせるという感じなんですね。コ・クリエーションは、そもそも人が自分の根っこにつながった上で、普通出会わないような人同士が、深い根っこでつながり合い、信頼でつながり合ったところから、計画的ではなく生成的に物事を起こしていく。そうして振り返ってみると、「予想だにしないような未来」が生まれていたというのがコ・クリエーションだと思っています。

ETIC.(エティック)と言うNPOの代表の宮城さんが、「奇跡を科学している」と表現してくれたのですが、まさしくそんな感覚です。奇跡って、人であったり、地域みたいなリソースも含めたもの全てが活かされ合った時に出現すると思うんですね。そんな奇跡のようなことがどうやったら起こるのかという条件とプロセスを、10年間研究し続けています。

今、研究のコミュニティのメンバーは300人ぐらいいて、地域の人もいたり、首長さんもいれば農家の人もいたり、行政の方もいます。官僚の方もいたり、大企業の人もいれば、ベンチャーの人もいたり、大学教授がいればNPOもいたり、クリエイターもいたりします。普段お互いに出会わないような人たちが集まっているコミュニティです。実行委員会形式の任意団体として動いていて、リクルートがスポンサーという形をとっています。

コクリ!プロジェクトとはの画像1

このコクリ!プロジェクト、コ・クリエーションの研究なんですが、地域の研究から始まって、地域の人たちが全国から集まるラーニング・コミュニティにして、その後全国コミュニティになってと進化してきましたが、冒頭申し上げた通り、気づけば地域内と地域外の関係性の研究も行っていたため、今日は関係人口の観点から研究内容をシェアさせていただこうと思っています。

今、関係人口というのはブームになりつつありますが、結果として地域に良い影響をもたらさないような関係人口が増えて欲しくないなとも思っています。今日は、関係人口が多様であること、その中でも共創的なコ・クリエーション型の関係人口というものが存在するということ、そして、そういった共創的なコ・クリエーション型関係人口を作るために必要なポイントをご紹介したいと思います。

交流人口と定住人口の間が関係人口ですが、それは多様だなと思っています。いわゆる体験型、農業体験等、体験を入口として地域に入って来る方もいれば、多拠点という形、2拠点・3拠点という形で住むようなライフスタイル型の人もいます。そして、ビジネスという関係で、ビジネスという形の中で課題解決をしながら関係人口になってる人。そして、共創型のコ・クリエーション。これは夢や願いでつながったものです。今日はこの共創型のコ・クリエーションについてお話したいと思います。

必ずどれかに分かれるというよりは、ビジネスから入って行っても共創型になる方もいますし、共創型から入ったけども、ビジネスはもちろんする場合もあるので、行ったり来たりしてくるものとなっています。

コクリ!プロジェクトとはの画像2

関係人口の落とし穴について

ちょうど前回のゲスト講師である「ソトコト」編集長の指出さんと対談しまして、そこから導き出した「関係人口の落とし穴」について紹介します。詳細はコクリ!プロジェクトのホームページにもっと詳細に書いてあるので、気になる方は「コ・クリエーション型関係人口」で、予想だにしない未来を生み出そう!|コクリ!プロジェクトをご覧ください。
1つずつご紹介します。

関係人口の落とし穴についての画像

1)数を追わない

指出「関係人口の数が増えた地域が変わるというのは明らかな間違い。関係人口は数よりも質の方がずっと重要で、たった1人の存在で地域がガラリと変わることも多い。」

三田「本当に1人の人が地域を変える事例というのをたくさん見ていました。関係人口側からすると、数が少ないからこそ自分自身の役割意識が湧いて、コミットが高まります。数やKPI・短期成果を求め過ぎると、無理矢理の仕事も増え、地域の疲弊につながって行きます。プロセスが本当に何よりも大事で、これを大事にすると自ずと結果もついてきます。」

2)移住をゴールにしない

指出「関係人口は時期によって関係が濃くなったり薄くなったりするのが普通。結果的に移住する人はいますが、結果論に過ぎない。少なくとも最初の時点では関係人口のほとんどは移住をゴールに置いていない。」

三田「移住する気はないけれども、地域にコミットする関係人口はたくさんいます。むしろ別の地域に住んでいるからこそ、違う風、リソース・価値観などを地域に持ってこれる。イノベーションは多様性から生まれます。移住をゴールにしていると関係人口が感じると、ちょっと避けられたり逃げられたりすることもあります。」

3)ファンやサポーターと捉えない

指出「ファンやサポーターには基本的に当事者意識はあまりありませんが、関係人口には当事者意識がある。関係人口の多くは、そのまちのことを住む人たちと一緒に真剣に考えて行く人たちなんです。」

三田「「お客さん扱い」をしたり、お膳立てをしたり、消費者とみなさないことが大切。ひとりの人として接する。誰だって名前で呼ばれて、個人として接してもらうと嬉しいですもんね。人として大切にはするけど、遠慮はしない、そんなフラットな関係だから生まれる未来があります。」

4)単なる労働力と捉えない

指出「相手を労働力だと思って良い関係を築けるわけがありません。これは多くを語る必要はないでしょう。」

三田「前述と同じように、関係人口を塊と捉えず、機能と捉えず、「ひとりの人」として向き合うことが大切」

5)類義語を増やさない

指出「最近、「つながり人口」、「複業人口」という言葉が出て来ました。この言葉が悪いと思わないのですが、類義語が増えることで、関係人口のうねりが小さくなることは避けたいですね。」

三田「「関係人口」に可能性を感じています。これまで存在していたけれども、言葉にならなかった願いや想いに言葉がついたな状態。単なる1ブームで終わらないように、丁寧に全国の皆さんと関係人口の取り組みを作っていきたいと。」

共創(コ・クリエーション)型関係人口について

ここからは共創的な関係人口、コ・クリエーション型関係人口についてご紹介していきます。まず、ポイントを5つご紹介します。

共創(コ・クリエーション)型関係人口についての画像1

1)フラットで対等な関係性

都市の人を「先生」としたり、主役にしたりしない。
地域の課題を解決するために都市の人を呼んで来るというようなスタンスだと、上下関係になってしまうんですよね。そうではなくて、逆に「地域から学ぼう」と、何かを一方的に貰いにくるではなくて、「共に未来を創る/一緒に何かを生み出そう」というスタンス、フラットで対等な関係性がとても大切です。

2)根っこでつながる

肩書ではなく「根っこの想い」でつながる。お互い夢や願いを共有している。
この「肩書ではなく」というのはすごく大事で、例えば市長とか課長とかというふうに呼んだりしてしまうと、どうしてもその人自身を課長という役割で話してしまったりするんですよね。なので、コクリ!プロジェクトの中では全員あだ名で呼び合うのですが、例えば町長でもみっちゃん、りょうちゃんと呼んでいます。その人の小学生の時のあだ名だったらしいですが、皆さんが自分で付けます。こんな中でお互い肩書ではなく、あだ名で呼ぶ、本当にフラットな関係性が大事で、そして役割として仕事の話をするというのではなくて、それぞれの夢や願いを共有して行く。そんなことがとても大切です。

3)ワクワク・楽しむ・熱量(オーナーシップ)

地域の人が楽しんでやりたいことをやると、その熱量が伝播して行きます。地域外の人のやりたいことを地域の人が応戦するのではなくて、地域の人たちがやりたいかどうか。

4)互いが進化する(自己変容)

お互いが自己変容していく。関係人口側と地域の人が、互いに影響を受け合って価値観が変化したり、ライフスタイル、そして人生が変化していく。

5)受け皿の多様性とキャパシティ

地域外の人と深い接点を持てるのは、1人当たり10人とか限界があります。そのため、関係人口と関係を継続する存在の多様性とキャパシティはすごく大事だなと思います。また、指出さんも「関係人口案内所」という言い方もしていますが、気軽に参加できる場やイベントも大切です。

共創(コ・クリエーション)型関係人口についての画像2

コ・クリエーション型関係人口事例(1) 熊本県阿蘇郡黒川温泉/南小国町

熊本県阿蘇にある黒川温泉南小国町です。黒川温泉は、今は人気温泉地ですが、実は30年前には地図に名前が載っていない、閑古鳥が鳴くような温泉地でした。それを当時の旅館青年部、今の親世代の方々が活発な活動をしました。看板も全部燃やして統一したり、植樹をしたり、山から木や石を持って来て露天風呂を手作りをしたりして、平成14年に120万人が訪れるような人気温泉地になりました。

私が関わったのは7年前ですが、その10年ぐらい前から、U・Iターンの若手が帰ってきているんです。ただ、帰って来たら自分の地元は人気温泉としてものすごい忙しい状況。何となくやりたいことはあっても、どうしても親世代の成功体験が強すぎて、若い人が何か言ってもすぐに潰されてしまうような状況にありました。

会議もよくあるロの字型の会議で、声の大きい人がいつも発言をしていて、そこでは若手がなかなか発言しにくい、そんな状態でした。ですので、15年間親世代の中心のまちづくりがある中で、なかなか若手は言いたいことを言えない。また、旅館以外の業種や行政も、まちづくりには関わっていない。そんな状態にありました。

その時に一緒にコ・クリエーション型のプロセスを行ったのです。最初は、地域内の関係性づくりからです。普通の会議は親世代が中心で、ロの字型で声の大きい人が話すというスタイルだったのを、まずは多世代に、青年世代と親世代、そして異業種として旅館、農家、商店、役場、県庁など、いろんな方々を巻き込んで、月に1回コ・クリエーション型の場づくりを9ヵ月間行いました。誰でもが対等で想いがつながるような場です。

コ・クリエーション型関係人口事例(1) 熊本県阿蘇郡黒川温泉/南小国町の画像1

この中で、写真にあるように即興劇をやったのですが、最初の頃すごく反対していた地域のおっちゃんが、自分で「変なおじさん」というポストイットを頭に貼って、変なおじさんの役を演じたんですね。普段の会議のスタイルだと絶対出てこないようなお茶目な面がこういう時だと出てきたりする。若手の人も普段の会議のスタイルだとなかなか物が言いにくいけれども、こういうざっくばらんな場だと思い切った意見とかアイディアが言える。それを見ている中で、親世代の人たちが、若者が結構本当にやる気もあるということで段々信頼できて、結果的にどんどん世代交代が起こって、若手が要職に抜擢されていきました。

農家の人も、幼稚園から知り合い同士の同級生とよく知る関係性なものの、まさか農家が黒川温泉の未来に物を申して良いと思っていないので、農家と観光の人が一緒に何かをやるということがなかった。ただもちろん、農家も観光も皆さんが一緒に考えるからこそ良い観光が作られていく。こうして、結果的に業種を超えたまちづくりができていくのです。

次におこなったのは都会とのコ・クリエーションです。渋谷と福岡に黒川温泉のみんなが遠征して、都会に住んでいて、地域の未来を考えたいという人を、お客さんではなく「第二町民」として巻き込んで、黒川の未来を一緒に作って行きました。そこで出たアイデアはすぐ2か月後にはプロトタイプをしたのですが、イベントの裏方を法被を着て手伝う、人の家で朝まで飲み明かす、といった第二町民的な旅が生まれました。

この時に、黒川の人たちは人生観が変わったと言っていて、普段黒川で出会う都会の人は“お客様”なので上下の関係で、おもてなしをしたらいいと思っていた。もちろん、こういう関係を喜ぶ人もいますが、都会の人が願っていたのは「横の関係」だったと。実際都会の人も、東京生まれの人も増えていて、第2のふるさとを求めている人が多い。こんな中で、これがきっかけで黒川に本当にコミットをして、数ヵ月に1回行くような濃い人もいれば、行くのは数年に1回だけれど、何かがあったら応援する。そんな第二町民的な人が200人ぐらい生まれていきました。

その結果起こったのが、このコクリ!をした翌年から、10年間減少を続けていた来訪者数が3年連続増加しました。もちろん、コクリ!だけが理由ではないと思いますが。

コ・クリエーション型関係人口事例(1) 熊本県阿蘇郡黒川温泉/南小国町の画像2

そして、異業種でのNPO法人を彼らが自分たちで作ったり、そしてその仲間の一人が42歳で町長選に出馬すると言い出した。16年間60代の町長が続いている中で、です。40代の町長は無理だと言われていたのですけれども、まち中の3,40代が組織化をして、普段3人でやるような辻立ちを2週間、20人でやり続けたのです。そうすると、まちの人が本当に若者がまちを変えようとしているのではないかと信頼を得ていき、最終的にはダブルスコア、2倍の得票数で42歳の新町長が誕生します。

元々、ずっと私のカウンターパートとしてやってきた北里有紀さんという、300年続く宿の社長がいて、彼女は史上最年少、しかも女性の旅館組合長に37歳で就任します。普段は60代の人がするポジション。そして、組合の理事が全員3,40代に世代交代をします。これは、全国的に見てもかなり珍しい。地域は皆さん元気なので50代、60代、70代といらっしゃる。その中で、全てを3,40代にバトンタッチをしていきました。

第二町民とのコ・クリエーションがいろいろ進みます。都会のウェブ、映像、写真、メイクなどのクリエイターと、黒川の人たちで、世界に打って出るような作品(映像・Web)を作りたいという想いで、予算なし、ギブ・アンド・ギブ、お互いの持っているものをお互い持ち出す関係性で作品を創りました。出演者はほとんど黒川の方。それが結果的に、ミラノ、ロス、スペイン、インドネシアなど、15個以上の賞を世界中で受賞していきます。

第二町民(関係人口)との共創の画像

結果的にこれは関係人口側の人がものすごく人生が変わりました。普段の仕事だと作れない素晴らしいポートフォリオができたことによって、オファーがくる仕事の質がガラリと変わり、どんどん有名にもなっていく人もいました。もちろん地域の人たちも、こういったことに関わることで新しい刺激を得たり、ブランドが上がったりしました。

そして、熊本地震の時に、本当にこの関係人口が機能したと言うか・・・。旅館がどんどんキャンセルが相次いで被害総額が10億円とか、予約数も例年の3割とかすごく減少していて、何をやってもお客さんが来ない状態になりました。国の公的な資金は3ヵ月後ぐらいにしか入らなくて、皆さん本当に参っていて、ものすごく辛そうにしていたんです。

その時に、「関係人口側の私たちも黙っていられないから、何とかしたい」という想いがあって。その時に行われたのが、この関係人口の仲間が自分で企画して、お客さんが来ないなら自分たちでお客さんを集めようと。しかもこの人たちはただ行くだけではなくて、ブロガーとか記事を書ける人。ブロガーとかライターとか記事を書ける人たちを100人黒川に呼んで、自分たちがお金を使って消費して、かつ100人がみんなでアピールして行く。そんなイベントを立ち上げて行きました。

この時に、本当に地元住民の方は泣いて喜んでいらして、こういったことが起こって行くのは素敵だなと思っています。そして、ファブラボ阿蘇南小国と言う世界で初めて木材に特化したラボなども生まれました。

コ・クリエーション型関係人口事例(1) 熊本県阿蘇郡黒川温泉/南小国町の画像3

コ・クリエーション型関係人口事例(2) 島根県隠岐郡海士町

島根県隠岐にある海士町の事例です。海士町は地方創生で有名なのでご存知の方も多いかもしれませんが、人口2,000人ちょっと。この中でIターンが600人以上いるという、すごくIターンの人が多い町で。CASとか岩牡蠣・隠岐牛などの産業もあれば、島留学・高校魅力化などの教育、そんな新しい施策に挑戦している島です。

私が関ったのは3,4年前ぐらいからですが、当時は第2変容期でした。16年続いた名物町長の山内さんが、2年後に引退を控えていて、そして山内さんの周りの課長陣も引退がこの数年で決まっている。そんな中、「次はどうしたらいいのか?」というような所が迫っています。そして、U・Iターン者に疲弊があって、一部の人にどんどん負荷が集中してしまっている。力を入れて来た交流もなかなか展開せず、点から線につながらないという状況がありました。地方創生の先進事例として知られているものの、将来が描きにくいという閉塞感がありました。

その時に行ったのが、面と面の交流、関係人口を作る試みです。20016年と17年に、地域内外のメンバーが同じくらいの人数で、町の人が36人、地域外の人が31人で、3日間のコクリ!型のワークショップを実施しました。海士町の人も、観光、漁業、役場、福祉、教育、商店など、いろんな次世代リーダーの方々。そして、地域外の人は企業経営者、大学教授、官僚、編集者、出版、プロデューサーとか、他の地域の人もいろんな方が参加してくれました。

プロセスはちょっとマニアックなとこもあるので少し端折って行きますが、普通にやると、海士町のメンバーからすると「すごい人がたくさん来た!」みたいな上下の関係になっちゃうんですね。かつ、一般的によくやられるのが、1日目は視察をして、2日目に課題のアイディア出し、3日目にアウトプット。でもこの方法を変えないと、「課題を持つ地域に都会の先生がアドバイスに来た。そしてアウトプットを出してくれた。」という上下関係になってしまう。この関係を崩していくということを行いました。

コ・クリエーション型関係人口事例(2) 島根県隠岐郡海士町の画像1

実は海士町って綱引きが皆さんとても強くて、町をあげての綱引き大会があるんです。なので、いきなりワークショップ会場にはいかず、神社で綱引きをすることから開始をしましたをしました。なぜなら、圧倒的に海士町の彼らが得意なことだから。来たメンバーは結構有名な人たちもいるけど、綱引きではめっちゃボロボロみたいな。海士町の人たちは口下手なので、どうしても話すのって地域の人より都会の人の方が得意なんですよね。でも実は地域の人って、体に染みついた素晴らしいものがいっぱいあって、なのでいきなり「言葉」を使うワークショップから始めないということを大事にしています。

他には、コクリ!ではホームチームというのを作って行くのですが、3日間ワークショップをする中で、3日間あると言ってもやっぱり70人全員と深くつながれるわけではないので、この仲間とは一生の仲間だと思うような海士町3人、コクリ!側3人のホームチームを作っています。実はこれを作るのに25時間ぐらい掛けていて、この人とこの人が出会ったらいいんじゃないかというのを、地域の中の関係性もそうですし、都会の方もそうですし、全てが奇跡になるようなチーミングというのも、時間を掛けて作っています。

今日の最後にもお伝えすることでもありますが、個人の「根っこの想い」を引き出し合うということをとても大事にしています。例えば、自分が今までの人生の中で一番ワクワクした体験とか、誇りに思っている体験。それって隣でずっと一緒に仕事をしている人であっても、意外と知らない、話すことないと思うのですよね。でも、自分が一番誇りに思うような、ワクワクした体験って話している中で自分自身も元気になってきて、自分はこんなことが大事だったんだなとか。それを聞いている中で、すごく深くつながっていくことができます。

そんな中で起こった変化ですが、まず次世代リーダーの変容と新たな事業が生まれて来ます。16年町を率いた山内町長が最後に涙を流されて、「ずっと心配していたけど、これで海士町の未来は大丈夫だと思った。」とおっしゃいました。それは、これまで大勢の若手が集まるということがなかったのです。彼らは想いを伝えることが苦手だと思っていた。でも、皆さんと一緒に対話をする本気の姿を見て、「本当に興奮した。」というふうに涙を流されておっしゃっていました。私も貰い泣きをしてすごいボロボロ。みんな貰い泣きをしている方がたくさんいるような感じでした。

次世代リーダーがどんどん生まれて来ました。例えば、町の主要企業の一つである観光ホテルの経営者に30代の青山さんが抜擢されました。前任者は70代の方です。30代が主要企業の経営者になるのは歴代初。そして、阿部さんというUターン10年目の方、彼は都会の企業の研修事業をやっていたのですが、それだけではなく、島から知を発信するような出版企業に新しく事業拡大をしました。

あと、やっぱり地方創生はやることがたくさんあるから、皆さんがどうしても疲弊していってしまう。でも彼はコクリ!の活動の中で、自分は今本当にギリギリの所にいるんだということ、このまま行くとバーンアウトしてしまうというその直前にいることに気づいた。それによって、自己犠牲をしない新しいリーダーシップというのをやっていくようになりました。

海士町の歴史的にも、危機感ドリブンの第一世代から、関係人口と共に新たな事業が生まれる次世代へと変化しています。

コ・クリエーション型関係人口事例(2) 島根県隠岐郡海士町の画像2

1人の関係人口でも、大きな変化を地域にもたらすということも紹介させてください。原田英治さんという恵比寿にある出版社、英治出版の社長が、このコクリ!プロジェクトへの参加がきっかけで、1年間親子島留学という形で海士町に家族で移住をして、そして東京にも月に1回来るというような二拠点生活で、海士町から恵比寿の会社を経営するということをやっていました。その中で、彼1人が海士町に来たことで、英治出版の著名な著者をどんどん海士町に連れてくる、という変化が起こります。

例えば世界銀行の元副総裁の西水美恵子さんや、世界的な変革ファシリテーターのアダム・カへンさん。そういった名だたる著名人たちを、東京から6時間もかかる、普段でもなかなか行かない島にどんどん連れてきました。結果的に1年間で200泊にも及んだそうです。本当に1人の関係人口によって、どんどん変化が起こって行きます。

そして、地味だけどすごく大事だと思っているのが、普段だと海士町にいなそうな人が海士町にいることによって、海士町の次世代リーダーのリーダーシップのあり方が変化しました。原田さんは海士町の人たちにとってロールモデルになったなんですね。海士町の人たちは、過去10年間は自分の成長がいかに重要か、自分がいかに頑張るかというリーダーシップだったんですけれども、そうではなくて後輩を育てる、社員の力を引き出す、チームとして成長する、そんなリーダーのあり方へと変化していきました。

根っこでつながるストーリーテリング

最後に大切なポイントをお伝えします。先ほどお伝えした「根っこでつながる」ということについて。そのストーリーテリングの進め方ですが、これもホームページにも出しています。今回の関係人口の発表から本邦初公開で、やり方を公開しているので、使いたい方は出典だけ書いていただければ使っていただけるようになっています。

このやり方をいろいろ書いているんですが、まずは問いが大切。例えば、よく使う鉄板的な問いがあります。「このまちを好きだなぁ、このまちで生まれて・暮らして・働いて・訪れてよかったなぁと思ったのはどんな時?エピソードでご紹介ください」。これは「まちのどんな所が好き?」と聞くと、「海。」とか「山。」とか「魚。」とかなってしまうんですよね。でも、そこは多分発展性がなくて、そうではなくて、「あそから見たこの景色がこう良くて」とか、「あそこのおばあちゃんとのこういう会話にすごく感動して」みたいな、エピソードで話してもらうということがまず大事です。

2つ目の質問がとても大事なんですけれども、「今までの人生を振り返り、誇りに思うような、最も嬉しかったこと、力を発揮したことを思い出してください。印象に残っている“シーン”をありありと教えてください」。これも「シーン」で話してもらいます。ここがありありと話せるということが、自分自身も話しながら自分の根っこにつながれるし、根っこ同士でつながっていきます。

そのほかに、今力をいれていること、エネルギーを注いでいることや、願い、これからチャレンジしたいことや越えたい壁なども聞いていきます。

私は、人と地域には本当に運命の出会いというものがあると思っていて、私にとって最初にご紹介した黒川との出会いは運命だったなと思うんですね。私自身も本当に人生観が変わって、仕事も変わってきました。黒川も大きな変化がありました。そんな関係人口って、運命のような出会いがあって、お互いすごく影響を与えると思っているんです。でも、それは正しいプロセスを経ないと潜在的な存在で終わってしまうかもしれません。そして、プロセスを丁寧にやって行くことが大事だと思っています。そんな深い関係性を持つ、関係人口ができていくことで、都会も変わり、地域も変わり、もっともっと美しい地球になって行くなと思っています。ぜひそんな未来をみなさんと共に創っていければ幸いです。

根っこでつながるストーリーテリングの画像

[会場撮影]内山 慎也 氏


三田 愛 氏の画像

三田 愛 氏
株式会社リクルートライフスタイル
地域創造部 じゃらんリサーチセンター 研究員
/コクリ!プロジェクト 創始者・ディレクター

リクルート入社後、人事組織系を専門とし、2011年より「コ・クリエーション研究」開始。代表研究の熊本県黒川温泉では、観光業者・親世代中心運営だった黒川が、農家・行政など多業種、青年部など多世代に関係性を広げ、都市の人も“第二町民”として、多様な関係者で共に未来を創る変革地域へと変貌を遂げる。コ・クリエーションの可能性を確信し、全国規模のコクリ!に挑戦すべく、2014年よりコクリ!コミュニティづくりの研究を開始。地域リーダー・企業・NPO・大学・官僚・クリエイター等、多様な社会リーダー約300人のコミュニティに。現在は、地域・社会のホールシステムチェンジの研究を進める。経済産業省「地域ストーリー作り研究会」や国土交通省「ライフスタイルの多様化等に関する懇談会」委員などを歴任。米国CTI認定プロフェッショナル・コーチ(CPCC)。英治出版株式会社フェロー。慶応義塾大学商学部卒。木や山など自然をこよなく愛す。特技は書道(10段)。