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「クリエイティブ思考からみた宇和島の魅力や可能性」|第2回UWAJIMA ふるさとMeet Up【in東京】レポート 第1弾

記事ID:0046298 更新日:2019年3月5日更新 印刷ページ表示

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12月4日に<第2回UWAJIMAふるさとMeet Up “LIVE!”in東京>を開催しました。
本イベントは、うわじまシティブランディング事業の進捗報告、ゲストによる講演をヒントに、参加者同士で宇和島の未来を共に創るにはどうしたらよいかをワークショップ形式で語り合い、宇和島の魅力を再発見しながら、地域課題の解決と新たな価値創造への道筋を探っていく、地域未来への対話の場です。

うわじまシティブランディング事業での様々な調査やワークショップを通じて、宇和島の魅力づくりのために共創型関係人口による文化創造の必要性が今後の課題であることがわかってきました。

第2回にあたる今回は、宇和島を新しい魅力を発信し続ける文化的な街になるために、そして関係人口を増やしていくためにはどうしたらよいのかを参加者と一緒に考える機会としました。

この記事では、ゲスト講師お一人目の岡田 光 氏(株式会社トランジットジェネラルオフィス常務執行役員CCO/Creative Director)によるご講演内容を紹介します。

岡田氏はホテル、旅館、レストラン、カフェ、レジデンス、オフィス、観光列車、スパ施設、地域活性化案件などのクリエイティブ・プロダクション&ブランドエクスペリエンスデザイン業務に従事されており、宇和島の宿泊施設「木屋旅館」のプロデュースに関わられて以降、毎年の様に友人家族を連れて宇和島にプライベート旅行をされており、講演では岡田氏にとっての宇和島の魅力も語られています。


クリエイティブ思考からみた宇和島の魅力や可能性

岡田 光 氏
(株式会社トランジットジェネラルオフィス常務執行役員CCO/Creative Director)

岡田 光 氏の講演の画像

会社紹介

まずはうちの会社がどんな会社なのかということを説明します。今まで関わったプロジェクトの中でも、割と大都市圏での仕事が多いのですが、地域との接点もお仕事でやってきているので、その代表事例を紹介したいと思います。

代表が30歳前後の年齢のときにこの会社を作って、「クリエイティブ・プロダクション」をやって来ました。始めた時はスタッフが10人に満たなかったですけども、今は3200人を超える人数の規模になってしまいました。

巷でよく聞く「プロデュース」という仕事とイメージが近いですが、我々が「クリエイティブ・プロダクション」という言い方をしたのは、外国のクライアントと一緒に仕事をすることが最近多くて、外国のインテリアデザイナーや建築家、グラフィックデザイナー、イラストレーターの方に「プロデュース」と言うと、製造業だと思われてしまう。飲食業もしていますから、食の製造部門だと思われることもあって・・・。

いや、違う違うと。じゃあ「クリエイティブ・ディレクション」か?と言うと、実はもう少し踏み込んでお店のオペレーションとかもするので、我々は「クリエイティブ・プロダクション」という言葉を使っています。

もう1つはブランディング業務で、広告代理店さんが割とそこをやるけれども、代理店さんのさらに組下で我々が動いているということもあります。簡単に言うと名前を決めたりとか、キャッチコピーを入れたりとか、どういう広告戦略をやって行くか、そういったこともお手伝いすることがあります。

会社紹介の画像1

代表的な事例で、ちょうど目黒の学芸大学駅の裏にあったホテルニュー目黒を改装して「CLASKA(クラスカ)」というホテルをつくりました。たった9部屋でも変わったホテルだと世界中で結構有名になって、これによって結構会社が大きく変貌を遂げて、いろんなホテル案件が増えました。

経営面でどうやって売上を上げたらいいかとか、人の管理とか、いわゆるちゃんと運営面もケアできるので、上層概念だけ落とし込んでかっこいいのを持って来るって、実際それが儲かるのか儲からないかというのは、事業をやっていないとわからないのですが、マネジメントがわかる会社として、お仕事を頂戴することが多いです。

最近シェアオフィスが流行っていますが、実は弊社がコワーキングスペースのパイオニアです。日本でこういう貸し会議室(当回の会場のこと)とか。それ以外だと外国の弁護士さんとか、IT会社やベンチャーのリーダーとか、結構高級志向なオフィスにみなさん入るんですけども、それではなくてコワーキングスペースという(選択肢を作った)。weworkがアメリカででき始めたころに日本でやっていました。

会社紹介の画像2

これ(上図)はお台場の近くの青海と言う所で、ただ、普通にあんな場所で大きくマンションを作っても人が入らない所だったので、働きながら何となく寝泊りができるようなSOHO(※)という言い方でやることにした。共用空間にジムとかも入れて、大きいバスルームを1つ作って、働きながら眠れるみたいな感じにしたら、そういう働き方の人がいっぱいに満室稼働したという珍しいケースです。

※“Small Office Home Office”の略語で、小さなオフィスや自宅を仕事場とする働き方、またはその仕事場、物件のこと。場所や時間にとらわれないワークスタイルのひとつとして注目され、SOHO可の賃貸物件も増えている

会社紹介の画像3

おもしろい事例として、近畿大学のラウンジ。近大はマグロの養殖で成功していますよね。近大は今、本当に学生に人気の高い大学になりました。大学内にお寿司屋さんをつくりました。ここで近大マグロを出しています。近大マグロが入らないと普通のマグロが出ます(笑)。大学関連で言うとこれとは別に千葉商科大学と言う所の学食のお手伝いをして、千葉商科大学はオペレーションもやっています。

仕事として圧倒的に多いのは不動産会社、鉄道会社、ファンド系、それからファッション企業、あとはホテル会社です。そういったところからお話が来て、我々は空間をつくります。それ以外に我々自身が、ホテルやレストランやカフェをオペレーションしているのが、今110店舗ぐらい全国にあります。

会社紹介の画像4

レクサス、メルセデスベンツ、六本木ヒルズの森ビルさん、スカイツリーの中の展望台カフェなど、他社のブランドを預かり、オペレーションの業務委託を受けてやっています。

宇和島「木屋旅館」

宇和島「木屋旅館」の画像1

宇和島木屋旅館。もう10年以上前になりますか・・・。

この木屋旅館は、宇和島市内の中心部にあり、明治に創業し、多くの文化人や政治家が宿泊した老舗旅館でしたが、平成7年に周囲に惜しまれつつ廃業しました。その後、戦争により市街地の7割が被災した宇和島市にとって、木屋旅館は宇和島の近代化を物語る建物として歴史的な価値が高く、そして建物自体の価値としても貴重な市民文化財であるとして、旅館の所有者から市が施設を買い取り、再び旅館として再生することとなりました。

再生された木屋旅館の指定管理者を宇和島市が募集するにあたり、地元有志の経営者の人たちが一緒になって名乗りをあげ、木屋旅館に新たな息吹を吹き込むための提案を行い、それが認められて指定管理者として木屋旅館の運営に関わることとなりました。

我々は、二次工事から入っていって、オペレーションの組み立てをやりました。二次工事のデザインで、永山祐子さんという非常に著名な建築家にお願いしました。

宇和島「木屋旅館」の画像2

限られた予算でどういうふうに効果的に見せて再生するか、建物が古くて防音を考えると、小部屋で売るよりも、一棟丸ごと貸し出した方が話題性も高いし、オペレーションも楽。もっと言うと、ここで夕食を出したりするのは、オペレーションも大変で、コスト倒れする可能性がある。街の真ん中にあるということが逆に有利で、宇和島はおいしい所がいっぱいあるので、夕食は周りのおいしい料理屋を紹介するという形にしました。朝食は簡単な軽食が出ます。

宇和島「木屋旅館」の画像3宇和島「木屋旅館」の画像4

旅館マネジャーのグレブ・バルトロメウスさん(ポーランド出身)は、最近有名人になりましたけど、最初来た時はなんだかよく分からなかったし、私と風貌やキャラも被っちゃって(笑)。私の方が逆に日本語がうまいので・・・半分は日本人なんでね(笑)。でも、グレブは多分光るものがあった。最初は彼の奥さんをメインにオペレーションしていましたが、今や彼は木屋旅館の「顔」になっています。

宇和島「木屋旅館」の画像5

地域での事例紹介

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オランダ大使館と奈良県の共催で開催された【LLOVE】。奈良県の職員宿舎などに使われていた築40年の代官山にある建物を、オランダのデザインチームと一緒に、1ヶ月間限定のホテル客室をイメージした展示をつくりました。結構予算が無かったのでラフな感じでつくりましたけど、著明な日本の建築家とかデザイナーが4組とオランダのデザイナーが4組で客室をつくりました。ここは実際に泊まれて、我々がオペレーションをしました。我々が地方行政と大使館の窓口になって仕事を受けて、実際それを最後まで実行して、1ヵ月稼働しました。

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TOHOKU EMOTION(東北レストラン鉄道)

JR東日本さんからのお仕事で、3月11日の東日本大震災で被災した東北を何とか元気にしなければという案件。JR八戸線は三陸鉄道に乗り入れ、八戸から宮古を通って最終的に下りて来るんですけれども、いわゆる三鉄というのは震災で全部流され、八戸線も被害にあいました。

これを再生して特別な列車にしたいとのことで、「新しい東北を発見・体験する」列車を全部一からつくりました。非常に良い事例で話題になり、地元の人からも感謝され、大変良かったと思います。列車が通ると地元の方が手を振ってくれて、いつもお出迎えしてくれたりする。そろそろ7,8年経ったかな。ありがたいことにずっと満席が続いています。シェフが変わったり、メニューが変わったりして、ずっと変化させていっている状況。

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現美(げんび)新幹線(上越新幹線の越後湯沢~新潟間を「とき」号の臨時列車として週末を中心に1日3往復運行)。秋田で走っている「こまち」という古い列車を改装してつくりました。なぜ「現美(現代美術の略)」にしたかと言うと、新潟で開催されている「大地の芸術祭」との縁もありましたが、該当区間は本当にトンネルが多くて、外の景色がトンネルなので、中で見せようと思い、結構大胆なことを施しました。片面全部潰し、窓が片面しか出ない。全部アートが入っていますが、1個だけグリーン車を残しました。

これも「世界最速美術館」という、アホみたいなキャッチコピーを作りました。速い必要はないんですけども(笑)。ただ、やっぱり動いている中で、車内でどういうふうにアートが変わるかも考えました。あと当然、子どもとの旅行。新幹線に乗った時に子どもはじっとしていられないから、子どもを遊ばせておきながら、奥には実はカフェがあって、お母さんたちがカフェちょっとのんびりしながら、コーヒーが飲める空間にしました。

地域での事例紹介の画像7

時代は『TRAVEL 3.0』のステージへ

我々は最近企画書でよく使うのですが、海外の雑誌とか見ると「TRAVEL 3.0」とあります。昔は代理店主導のパッケージ型旅行が中心でした(『TRAVEL 1.0』)。団体旅行が一般的だった。今の中国がもしかしたらそうかもしれないですね。その後、個人の趣味趣向で目的地(国・都市・地域)で自ら手配して旅をする『TRAVEl 2.0』の時代に変化していった。そして今、さらに旅や観光の在り方が変わってきている。

最近はSNSの発達で、「あのすごい場所にピンポイントで行きたい」という風になっています。ピンポイントなデスティネーション型の旅。「自分にとっての世界七不思議」「自分にとっての世界遺産」をSNSで発掘して、それに向かって旅をするという思想です。

例えば「マカオに行きたい」ではなくて、「マカオにある、あの建築物を見たい!SNSで共有したい!世界中の人に自慢したい!」と、そういう方向性にあります。超富裕層、超リッチな人たちしかなかった情報がみんなに拡散しているので、日本に限らずヨーロッパでも結構みんな「ここに行って写真を撮りたい」とか言っている。

つまり、行きたいのか、もしくは行って写真を撮って自慢したいのか、分からなくなっている時代になってきていると感じます。

時代は『TRAVEL 3.0』のステージへの画像

重要なのは、『TRAVEL 3,0』の旅人に注目される目的地になるには、びっくり建築や壮大な自然だけではコト足りない。つまり、五感を刺激するだけでは満足させられないということです。旅人が持ち帰って語ることができるような、もしくは誰もが投稿できるような物語を作る「特別なコンテンツ」が必要です。このコンテンツを考えるのに使える世界的なトレンドを紹介します。それを見据えて、どういう国、場所づくりをするのかを意識していけばいいのではないでしょうか。

3つの世界的リゾートトレンドワード

〜「エコフレンドリー」「ローカルガストロノミー」「デジタルデトックス」

「エコフレンドリー」は、環境に配慮したラグジュアリーホテル&リゾートのトレンドです。エネルギー、水、ゴミ、生態系など、持続可能な運営基準でユニークな体験を提供することですべての事柄と意義深く繋がります。今は建物を作る時からエコを考える時代で、どこまでハードにエコで作っていくか。結構これが大テーマですが、実際にコスト面でも得すると思います。

次に「ローカルガストロノミー」ですね。「レストランは地方の時代へ」とささやかれる地産地消の流れは、早くからヨーロッパ、アメリカ、アジア、オセアニアで動きはじめ、今ではリゾートホテルの大きな渦となり、ローカルな「食」を求めてホテルを選ぶことが時代の流れになっています。地方で採れた物をうまくスーパーシェフに作ってもらってやるような、ローカルかつグローバルセンスな「食」が大きく注目されています。

あとは「デジタルデトックス」。いかに電波や電子機器から離れるということで、静けさを求めて、それが贅沢だというトレンド。スマホを金庫に預けて、1週間これを無しにするということが耐えられるか(笑)。もう現代人は自己制御が聞かないから、荒療治するような。デトックスとしてスマホをブロックするみたいな感じ。

KAMIKATZ.〜徳島県上勝町〜

KAMIKATZ.〜徳島県上勝町〜の画像1

徳島の上勝町は、人口1,700人に満たない、割と高齢者が多い所。葉っぱビジネス「彩(いろどり)」で有名になった場所です。葉っぱビジネスは上勝町が作り出した新しい産業で、究極の福祉と言われました。料理のつま物にする材料として葉っぱを商品化した物ですね。実は20年前から「ゼロ・ウェイスト」宣言(国内初)をして、将来的に町内のゴミゼロを目指してやってきました。当時から36分類でゴミを分けていて、今は45分類です。

上勝町からうちに依頼を受けて、今関わるようになりました。例えばビール工場を作ったりとか。今私が関わっていて、2020年春にオープンします。実際はちょっと内閣府からも支援をいただいて、「WHY(ワイ)」というプロジェクトが、実は「ゼロ・ウェイストステーション」というごみの収集所の建て替えで、こんな感じなりました。これは公共建築です。

KAMIKATZ.〜徳島県上勝町〜の画像2

加えて、ここにビジネススクールの機能を設けました。講師を入れて年に何回か講座をやっていく。広島と長崎が「平和教育」の修学旅行の目的地だとしたら、ここは「環境教育」。環境教育はこれから間違いなく小・中学校の教科書に載ってくる話なので、環境教育の修学旅行の目的地となってくれればいいなと。

正直言うと就労人口を増やすとか定住人口を増やすという話は、実際日本全体の人口が減っているので、上勝町であっても難しい問題です。やはり関係人口を増やすという方向になってくるなと思っています。

おもてなしとホスピタリティ

これから地域の人たちが移住者や観光客をどういうふうに受け止めるか、ホスピタリティDNAをどうやって地域に注入するのか。まずは、観光客を嫌がらず、「良き人々」として定義すること。歓迎する気持ちは伝わるので。嫌がる人がちょっといたら離れていっちゃいますね。ただし、「郷に入っては郷に従え」で、その地のルールを順守させる。

やっぱり外国語は話せた方がいい。あとは、子どもたちが他人のためにどう働くことができるか。例えば郷土料理のつくり方を教育する。もし本当に観光でやっていくんだったら、子どもたちに観光客をホストする側の楽しさを早めに教えてあげるとか。観光業界は働く人が足りないという問題もあるので。

それから、市役所は「まちの社交場として、今まさにこういうことをやっています」ということをどういう風に伝えるか。市役所が「おもてなしの場所」として認知されることになっていくと、人が集まりやすい。

おもてなしとホスピタリティの画像

宇和島の魅力

愛媛は、木屋旅館と、あとは実は道後の温泉アート。あれも実は我々が関わっていました。弊社にも松山出身の人間が何人かいますが、松山の人間でも「実は宇和島に行ったことがない」という。むしろこういうもので、近いから行かないのかもしれない。

私は木屋旅館のプロジェクトをきっかけに、宇和島に行くようになりました。私自身は半分スイス人です。生まれたのは東京の八王子で、育ったのは横浜。比較的、都会と言っちゃ都会です。例えば四国の方からすると、多分東北って北海道は行くけど、秋田とかは最果てと言うか、すごく遠いですよね。でも私らにしてみれば四国って遠くて、関東出身の者からは「はるばる来たなあ・・」という感があります。

私が最初に宇和島に訪れた時はまだ高速が開通していなかったので、松山空港から松山駅まで行って、特急宇和海に乗って1時間半揺られて、それで宇和島駅に着いた。同世代ならわかってくれるかもしれませんが、古谷一行や武田鉄矢の「思えば遠くへきたもんだ♪」的なセンチメンタルな旅情感に包まれた記憶があります。同様なものを他の日本で感じたのはどこかと聞かれたら、個人的には鹿児島港で対岸の桜島を見た時ぐらいです。私は結構日本国内を旅しますが、沖縄に行ってそういう気持ちにならない。でも、宇和島では何かそういう感じになったのです。

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仕事でアクセスの悪い日本の各地にいくことがあります。秋田の大館、三陸の宮古、志摩の賢島、佐渡ヶ島、今日帰ってきた徳島の上勝などなど。アクセスが悪いって、すみません。失礼な言い方ですけど、宇和島も比較的アクセスが悪い(笑)。でも宇和島には、そのどこにもない独特の「熱気」というか「熱波」があります。

それは地元の人は、多分全然気づいていないと思う。外からくる我々から見ると、何かものすごい感じを受ける。もしかしたら「人」が醸し出ているものなのかもしれない。先ほど聞いた「シビックプライド」という言葉、あれも宇和島人としてのある意味の誇りと言うか、たぶん宇和島にいる宇和島人のプライドと熱量が街の空気になって伝わってくるものなのだと思います。おそらく歴史的背景、文化度が高い、あとは産業で栄えたという実績がある。それらが自信の表れとなって感じられるものなのではないかな・・と考えます。

宇和島を最初訪れた時に、その地形を「山と海が近い場所ですね」と伝えました。ちょうどその時、クロアチアという所に行って帰って来たばかりで、ちょうどヨーロッパのクロアチア旅行から帰ってきたときに、初めて宇和島を訪れることになったので、「宇和島はクロアチアの地形に似てますね」と言った覚えがあります(笑)。

宇和島百景」を拝見すればわかりますが、宇和島の景色の魅力は、自然と建物と人々の暮らしの姿がとても「フォトジェニック」なところです。大自然が凄いところは他にいくらでもあります。ただ自然と建物と人々の姿が絵になる場所は、日本では数少ないと感じます。宇和島にはそれがあります。

グアムとか、ハワイとか・・・先ほど市長がシチリアのような風景と仰いましたが(私はシチリアで結婚したので、シチリア大好きですけど)、ヨーロッパを回っていると、建物と人と文化と自然が絵になる場所って、すごいきれいな海がある、それだけなんです。それが結構フォトジェニックで、宇和島もそうだなと思いました。切り取りたくなる。本当にそういう意味では、すごく感じるものがあります。

宇和島の魅力の画像2

私は司馬遼太郎のファンですから、宇和島に行く前から「花神」や「酔って候」や「馬上少年過ぐ」を読んで、宇和島がなぜ伊達藩なのか、宇和島になぜ医者が多いのかは予備知識がありました。そして宇和島という東京から遠く離れた土地に、そこはかとないが憧れがありました。で、実際に宇和島に行ったらその通りで、期待が裏切られることなく、良い意味での幻想が邪魔されずに自分の心に入ってきて「そうそう、これこれ、想像していたとおり」という感じになりました。これは結構稀なケースです。だいたいは小説で知った世界とのギャップがすごくてガッカリするものですが、宇和島には裏切られませんでした。

戦国時代で織田・真田・上杉・武田などと並んで最も人気のある伊達の文化が四国にあるという特異性、闘牛場と闘牛という異国情緒も感じられる娯楽文化、独特の食文化、日本の宝石の代表格である真珠、城が現存する城下町、和霊神社のスピリチャルな成り立ち、リアス式海岸を眺める愛南までの美しいドライブロード、日本の現代美術の大家・大竹伸朗さんの存在、魔除けの牛鬼、牛鬼祭りを加えた和霊大祭という奇祭・・・。日本に暮らしながらにして、知らない日本がこんな凝縮する場所を、私は他に知りません。「え、宇和島って何?全然知らない日本がある。」というのが、ショックでした。

宇和島を「旅の上級者」向けに

ですから、私が思う宇和島の旅のターゲットマーケットは「旅の上級者」です。外国人を狙うよりも日本の方々に来てもらいたい、知ってもらいたい、と願う場所です。何故なら、「あなたたち日本人が知らない日本がこの宇和島にあるから」と、私は答えます。

私が東京から友人を連れて宇和島に来ると、彼らは決まって自分たちが知らなかったことが多いことに驚いて、そして感心して帰っていきます。私はそれが楽しくて、自分の友人や知り合いを連れて宇和島を訪れます。これは別のカタチの私なりの「郷愁」なのかもしれません。

宇和島を「旅の上級者」向けにの画像

観光において重要なポイントはリピーターを増やすことです。ファンになってもらうことです。そしてそのファンがまた別の人を連れてきてくれて、その人がファンになるという連鎖が成功の証です。

外国人旅行客、現在の日本だとその大きなマーケットは中国大陸の方々です。中国大陸のお客様をリピートさせるのは、宇和島は至難だと思います。彼らに宇和島の歴史背景や文化度に魅力を感じさせるのは、およそ不可能だと考えます。そもそも彼らにおけるノスタルジーは古代中国にあるべきで、日本にそれを感じられる訳がありません。彼らは先の大戦以降の近代日本の文化に魅力を感じているわけで、戦国時代から幕末、明治期の宇和島についての歩みについて説明したところでピンとくる訳がない。すべての日本人に宇和島を知ってもらう!すべての日本人に宇和島に来てもらう!というKPIの方が達成過程での生産性が高いと感じます。

日本の旅人を再訪させる大切なポイントは、宇和島に居る人達との接点と交流です。それを経て深くその土地や風土を知ることになるわけですが、それが濃くなれば濃くなるほど、私みたいに自分のふるさとでもないのに、宇和島への「郷愁」の幻覚に取り込まれ、それがまた訪れさせるアクセルになります。現に私も木屋旅館というプロジェクトのおかげで宇和島の人々と多くつながり、その人達との再会を楽しみに宇和島を訪れます。

人との交流ですが、それはやはり母国語が同じ言語があることが重要です。生活様式が近いほど、共感できるものが多いのが自然だと感じます。他国の方々の交流には刺激が多いですが、共感を創造するのには時間がかかる。なので、観光において短い時間で接点をつくり、交流し、いわゆる「縁」を深めるには、それはもう日本語で通じあうことの方が現実的です。これは何も宇和島に限ったことではありません。東京でもどこでも日本全国、我々日本人は日本語で生活していますから同じことです。

私は仕事で宇和島のいろんな人と接点を持ちました。そういう接点が生まれて、結局こうやってみなさんと会うとか、いろんな人と会うのを楽しみに私は帰っている。半分以上そっち。「あのお店の店長に会う」とかそういう話で、そういう所がみんなにあると良いなと思うけど、それを英語でやるって、東京でもしんどいですよ。それぐらい深い接点、コミュニケーションを外国人と、もしくは中国語でやるのは。それってやっぱり日本人の方が良くて、そういう意味では、日本全国の人がここへ来て、知らなかった日本を見つけてくれるというのが良いと思います。

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宇和島は明るい。もしかしたら暗いこともあったかもしれないけど、明るいものがそこにあって、しかも凝縮していて楽しい。よく言う「非日常」に近い。別に年がら年中闘牛をやっていないけど、牛と牛が戦う姿を見れるとか。

これだけ楽しいことが凝縮してあって、しかも文化度が高くて、食事がおいしいというのは、すごく貴重な魅力だと思いますし、ものすごい強みだと思いますね。でもこれらをPRするって、宇和島に一度来させないと多分無理だと思います。だから私は何度も戻るし、自分の行ったことない人を案内したがるし、来させたがる。人に見せたい。人に自慢したい宇和島なんです。それは多分宇和島で働いている人とか、住んでいる人は気づかないと思いますけども、日本中探しても結構ないものですよ。でも、幸いにも応援してくれる司馬遼太郎の本があるのですから、伊達好きの人がいたりとか、いろんな接点はあるので。再訪させる所の仕掛けをどうしていくかというところがポイントになると思います。

宇和島は結構おしゃべり好きな人が多いんで(笑)。寡黙でよそ者を受付けないという感じは最初からあんまり感じなかった。京都に行くと、厳しいじゃないですか。良いと思いますよ、京都のプライド。ただ、あのくらいのシビックプライドになっちゃうと、結局「住めないな」って感覚が出てきます。宇和島はそういうのを全く感じないから、文化度が高いんだけど、そんなに鼻に来る感じではないというのはすごくあります。

宇和島の強み、宇和島の魅力、それは外国人にも感じてもらえますが、日本人にはより濃く刻まれるモノだと思います。

もう一度言いいます。
すべての日本人に宇和島を知ってもらう!すべての日本人に宇和島に来てもらう!

[会場撮影]内山 慎也 氏


岡田 光 氏の画像

岡田 光 氏

株式会社トランジットジェネラルオフィス
常務執行役員 CCO/ Creative Director

1971年生まれ、神奈川県横浜出身。Swiss Education Group César Ritz Colleges卒業。ヒルトン・ホテル&リゾート、ハイアット ホテルズアンドリゾーツ、ザ・ペニンシュラホテルズ等の外資系ホテルを経て、2003年トランジットジェネラルオフィスに入社。常務執行役員、クリエイティブ・プロダクション事業本部長として、ホテル、旅館、レストラン、カフェ、レジデンス、オフィス、観光列車、スパ施設、地域活性化案件などのクリエイティブプロダクション&ブランドエクスペリエンスデザイン業務を担当。

これまでの主な担当プロジェクトとしては、東京のホテル「クラスカ」、大阪のホテル「堂島ホテル」、愛媛宇和島の旅館「木屋旅館」、東北レストラン列車「東北エモーション」、新潟アート新幹線「現美新幹線」、豪華寝台列車「四季島」、徳島上勝のブリュワリー&バイオ施設「ライズ&ウィンブリューイングバーベキュー&ジェネラルストア」「カミカツストーンウォールヒルクラフト&サイエンス」、博多都ホテル内レストラン&バー「サムウェア」など。現在は東京・丸の内の「大型メンバーシップクラブ」、東京・東麻布の「スモールラグジュアリーホテル」、長野・軽井沢の「ラグジュアリーリゾート」、徳島・上勝の「ゼロ・ウェイスト複合施設」、東京~下田を走る「特急踊り子の新型車両」、富士山の足元の「世界規模の複合型リゾート施設」などのクリエイティブプロダクション&ブランドエクスペリエンスデザインを担当。