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医師会 健康講座131~140

印刷用ページを表示する掲載日:2016年10月31日更新

医師会 健康講座

多様性と標準化 中山内科胃腸科(堀端町)中山 和文

 2015年の春先、コレステロールの治療をしている人の間でちょっとした混乱が生じました。
 2013年にアメリカのガイドラインが「コレステロール摂取量を減らすことによって血中コレステロール値が低下するという証拠が数字として出せないことから、コレステロールの摂取制限を設けない」とし、これを受けて日本でも、2015年にそれまで推奨されていたコレステロール摂取量の数値目標が撤廃されたのです。
 このことがマスコミに取り上げられる過程で、あたかも食事療法は無意味であるといった誤解が生じ、なかにはコレステロールは下げる必要はないといった極論まで出てくる始末で、これに影響されて実際に処方中止を希望する人が現れる事態となりました。背景には他人に管理される不快感や、症状もないのに薬を飲み続けることへの心理的な抵抗があるのかもしれません。

 しかし、私たちは愛媛県が心血管疾患死亡率全国ワースト1である事実を重く受け止めなければなりません。高コレステロールが動脈硬化性疾患の危険因子であり、これを適正に下げることで心筋梗塞など心血管性疾患の危険が減少することはゆるぎないことです。一連の騒ぎはこれまで食事療法の目標の1つとして設定されていたコレステロール摂取量に、現時点で科学的な根拠が得られないので取り下げる、と言っているに過ぎません。
 そもそもガイドラインは科学的根拠に基づいて作成されるもので、その拠り所となる医学的な知見は日々更新されるので、その都度修正することは正しいありかたです。つまりガイドラインは作成した時点での医学的な情報に過ぎず、医療を行う上で十分尊重すべきではあってもの絶対的なものではありません。一方、私たち医療者にはガイドラインに準拠しつつ個々の患者さんに即した対応が望まれます。別の見方をすれば、多様な患者さんへの対応が恣意的にならないようにガイドラインが存在する、さらに穿った見方をすれば、多様化に対応しなければならない不安が拠り所となる標準を必要としている、とも言えます。

 実際の診療では、コレステロールが正常値を超えたからといってすべての人が薬を飲まなければいけないわけではありません。医師はガイドラインに準拠してコレステロール値だけではなく、年齢、性別、糖尿病などの合併症や心筋梗塞、狭心症などの心血管疾患の既往の有無、喫煙などを考慮して1人ひとりのリスクに応じた治療方針を決めます。同じコレステロール値でも薬を処方されている人もいれば経過観察のみの人もいるのはそのためです。
 ガイドラインをよく見ると、食事療法としてコレステロールの摂取制限以外にもこと細かな指示が記載されていますが、多忙な日常生活でこれを実行できる立派な人が果たしてどれ程いるでしょうか。私たちはそんなことよりできることから取り組んでみてはどうでしょうか。すべての人が食事療法で改善するわけではないし、具体的な数値目標もありません。それでも、コレステロールの摂取を控えてみることは試みてよいし、思うように下がらず医師から服薬を勧められたら飲めばよいのです。

 数字を下げることが目的ではなく心筋梗塞などを予防することが目標です。その意味では大筋でよい方向に向かえばよいのではないでしょうか。この大筋で正しいというのが大切で、私たち人間は厳密な科学的根拠などなくても、危険を避けて概ね正しい道を選択する能力が備わっていると信じるのは楽天的すぎるでしょうか。高コレステロールを指摘されたらまずかかりつけ医に相談してみてください。


医者がすすめても飲んではいけない薬? 市立宇和島病院(御殿町) 大木元明義

 患者さんの不安を煽る記事が毎週のように週刊誌に大きく掲載されています。外来で「私が飲んでいる薬が飲んではいけない薬として書かれていました」と心配される患者さんがたくさんいらっしゃいます。循環器内科で処方するほとんどの薬(高血圧治療薬、高コレステロール治療薬、抗血小板薬、抗凝固薬など)が飲んではいけない薬として掲載されています。今回はこの件について私見を述べさせていただきます。

 まず、命に直結する薬についてです。狭心症や心筋梗塞の治療のために冠動脈にステントを留置している患者さんは、決して自己判断で抗血小板薬を止めてはいけません。これらの薬を中止するとステントが血栓で閉塞し、心筋梗塞を発症する危険があります。また、心房細動で抗凝固薬を内服されている患者さんも、内服を中止すると脳梗塞を発症することがあります。これらの薬は出血性合併症が皆無ではありませんが、その有益性の方がはるかに高いことが世界的に証明されています。

 「血圧やコレステロールの薬は飲み始めると止められないのでしょ?」とよく質問されます。これらの薬にはタバコ・覚せい剤のような依存性はありませんので、いつでも止められます。ただし、内服している目的を考えると継続する必要があります。高血圧などを放置すると数年後に脳梗塞・心筋梗塞を発症する危険性が高いことがわかっています。これを薬で適切に管理すると発症が明らかに抑えられます。血圧は年齢とともに上がります。降圧薬は一時的に血圧を下げるだけで根治薬ではありません。薬の効果は約1日ですから、毎日飲まないと適正血圧を維持できません。高血圧の患者さんはほぼ無症状(高血圧は静かな殺し屋)ですので、内服の目的は現在の症状の緩和ではなく、将来の脳梗塞・心筋梗塞予防です。今止めると将来の大きな合併症を防ぐことができません。
 「コレステロールが低いと長生きできないと書いてありました」という質問もよくあります。がん患者さんはコレステロール値が低くなることが多いので、コレステロールが低い人の中には長生きできない人がいらっしゃいます。重要なことは、薬でコレステロールを下げている人と、自然にコレステロールが低い人を分けて考えることです。薬でコレステロールを下げると血管の動脈硬化(プラーク)を退縮させ、脳梗塞・心筋梗塞を予防できます。高コレステロール治療薬の発がん性については以前から懸念されていますので、世界中で研究されています。日本人の3割はがんで亡くなるので、内服していた患者さんががんで亡くなられることもありますが、薬の副作用ではないことが世界的にも証明されています。

 どんなによく効く薬であっても、患者さんが薬に対して不安がある場合は、効果は限られると思います。薬ですので副作用は皆無ではありません。卵や魚にもアレルギーが出る人がいるように、薬にもアレルギーが出る人がいます。お酒に弱い人がいるように、同じ量の薬でも効きすぎる人がいるのも事実です。その際には自己判断で薬を止めるのではなく、ご自身が納得できるまで主治医や薬剤師と相談し、適剤適量を調整し内服を継続することが重要です。人の命には限りがあり不老不死の薬はありませんが、生活習慣病治療薬は健康長寿の薬だと思っています。

 世界保健機関(WHO)が人類の健康に対する最大級の脅威と位置付けている「タバコ」の有害性についてはほとんど掲載せず、タバコ販売促進のために全面カラー広告を掲載している週刊誌を信用できますか?
 週刊誌報道が原因の不幸な事故が起こらないことを切に願っています。


夜間頻尿について 山中医院(広小路) 山中 望

 夜間頻尿とは夜間(就寝から起床まで)に排尿のために1回以上起きなければならないという症状です。従来、夜間頻尿は男性においては前立腺肥大症の症状のひとつと考えられていましたが、前立腺肥大症の手術を受けても夜間頻尿が改善しない場合があること、女性にも夜間頻尿を訴える患者さんは少なくないこと、糖尿病や睡眠時無呼吸症候群でも重要な症状の1つであることなどから、夜間頻尿の原因は極めて多彩であることが分かってきました。

 夜間頻尿の原因として、

  1. 多尿、夜間多尿
  2. 前立腺肥大症や過活動膀胱による膀胱蓄尿障害
  3. 睡眠障害(不眠症、睡眠時無呼吸症候群、うつ病等)

 などがあり、それぞれが合併している場合も少なくありませんが、水分の過剰摂取にともなう夜間多尿は非常に頻度が高いことが知られています。
 夜間頻尿を自覚したら、まず排尿日誌をつけてみましょう。準備するものは300~500ミリリットル程度の紙コップと記録用紙。起床時から丸1日、排尿した時刻と毎回の排尿量を記録します。合わせて水分の摂取量も記録してみましょう。3日間連続で記録し、次のように評価します。

排尿日誌の評価方法

1、1日の全尿量
 健康な成人の1日尿量は体重1キログラムあたり約20ミリリットルです。つまり体重60キログラムとすれば、1日の尿量は1,200ミリリットル、体重50キログラムなら1,000ミリリットル前後が正常な尿量ということになります。1回排尿量が約300ミリリットルとすれば、1日の排尿回数は4回前後ということになりますが、実際の生活では外出前の排尿、就寝前の排尿など100ミリリットル前後で排尿することもありますので、一般的な1日の排尿回数は5~6回です。1日の全尿量が体重1キログラムあたり40ミリリットル以上の場合は多尿です。例えば体重60キログラムの場合、1日尿量が2,400ミリリットル以上なら多尿で(正常は約1,200ミリリットル)、1回排尿量が300ミリリットルとすれば、1日8回以上排尿しなければならないことになります。

2、夜間尿量および夜間排尿回数
 夜間尿量の合計(夜間就寝中の尿量に起床時の第1排尿量を加えたもの)は1日尿量の20~25%ですが(1日尿量が1,500ミリリットルとすると350ミリリットル程度)、33%以上の場合は夜間多尿です。1回排尿量が300ミリリットルとほぼ正常でも、夜間尿量が1,000ミリリットルを超える場合は少なくとも3回は排尿のために起床せざるを得なくなります。

3、下部尿路症状の有無
 1日尿量が正常でも、1回排尿量が100~150ミリリットル以下であれば、当然頻尿となります。この場合は前立腺や膀胱の疾患による蓄尿障がいを考えなければなりませんが、頻尿、夜間頻尿だけでなく尿勢低下、排尿困難、残尿感、尿意切迫感などの下部尿路症状を伴うことが特徴です。

 水分過剰摂取による夜間頻尿と診断し、その患者さんに「あなたは水分の取りすぎですよ」という説明をすると、ほとんどの患者さんは「えっ」とびっくりされます。「水分を取れば取るほど身体によい」、「血液をサラサラにするため、夜間起床するたびにコップ1杯の水を飲む」と思い込んでいる人は少なくありませんが、過剰な水分摂取が脳梗塞の予防になるという根拠はなく、血液粘稠度に変化がないことも証明されています。
 いろいろな場面で「水分をよく取りましょう」というフレーズに遭遇しますが、過剰摂取による不利益ということも考えてみる必要があります。ただし、脱水状態に陥るような水分制限は危険なので、個々の患者さんの状態に応じた適切な水分摂取を心がけねばなりません。

 前述のように夜間頻尿の原因は多尿、前立腺肥大症や過活動膀胱、睡眠障害など多彩です。「歳のせいかな」と諦めず、泌尿器科専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。


 

「えっ!タバコが1箱3,000円!!」 わたなべハートクリニック(朝日町) 渡辺 潤

「タバコが1箱3,000円になるんだって!」

 愛煙家の人は、「そんなバカな!」とびっくりされるでしょう。でも、本当なんです。ただし、日本の話ではありません。
 2016年5月オーストラリア政府が発表した予算案で、タバコ税の増税計画が発表されました。その内容は、タバコ税を2017年から5年間、毎年12・50%増税するというものです。現在でもオーストラリアでは、1箱25豪ドル(2016年6月27日現在1豪ドル76円)=1,900円と非常に高価ですが、毎年3、4豪ドル値上げされ、2020年には40・06豪ドル=3,045円になる予定です。すごい値段ですね。とても庶民が買える金額ではないですね。
 ではオーストラリアの喫煙率はどうでしょう?随分低いと思われますね。正解は15%です。びっくりです!この値段(1箱1,900円)で吸える人がまだ15%もいるなんて、とても信じられません。
 日本の喫煙率は、以前は男性は90%を越えていましたが、タバコの値段が上がったこと、「taspo」の導入、喫煙できる場所が減ったこと、禁煙教育などのおかげで、男性でも30%程度まで減っています。それでも先進国の中では、非常に高い喫煙率です。
 タバコは「百害あって一利無し」と言うことは、もはや世界中の常識になっています。世界中の国が、自国民をタバコの害から守るため、いろいろな法律を整備して喫煙率0%を目指しています。

 以前、まだ禁煙治療が健康保険で認められていないころから禁煙クリニックを始め、もう長い間禁煙治療に携わって来ました。現在も毎年70人くらいの患者さんが、禁煙目的で来院されます。
 タバコは中に含まれているニコチンに非常に強い嗜癖性があるため中毒になりやすく、禁煙しようとしても禁断症状が強く出るため、自分でやめようと思っても、理性の力だけで禁煙に成功することは非常に難しいのが現実です。現在、禁煙治療薬として飲み薬と貼り薬の2種類が健康保険で認められています。これらを使って禁煙にチャレンジすれば、思いのほか簡単に禁煙に成功します。禁煙を考えている人はぜひ試みてください。
 とはいえ、15年以上毎年70人の患者さんが来院され、禁煙クリニックで治療しても、1,000人喫煙者が減っただけです。中には喫煙を再開されている人も珍しくありません。
 やはり「元を断たなきゃダメ!」です。

 そのためには、中学生、高校生、大学生などの若者にタバコに近づかないようにさせることが大事です。
 白髪の私がコンビ二でビールを買うとき、とても20歳以下とは思えないのに、20歳以上であることを確認するために、画面にタッチすることを求められます。中学生がタバコを買うとき画面にタッチすれば、売ってくれるのでしょうか?こんな責任逃れだけが目的の子どもだましのような方法でなく、根本的な方法が必要です。
どうすれば良いでしょう?
 愛煙家(この言葉にも少し欺瞞を感じますが)には申し訳ありませんが、タバコ税を上げることです。せめて、欧米並みに1箱1,000円以上にすることが必要です。どうせ上げるなら一気に上げることです。そうすれば、喫煙率は激減します。中学生や高校生、若者がタバコに手を出せなくなります。喫煙率が下がっても税収が減ることはありません。税金は、高いタバコが購入できる富裕層(?)に払ってもらいましょう!

 日常診療で、肺がんや肺気腫、心臓病の人などタバコと関連した病気の人に多く出会います。「タバコを吸わなかったら、今の状況は無かったかもしれないな」と思う人がいなくなることを希望します。


B型肝炎ウイルスとワクチンについて 上田小児科・外科(広小路)  上田 誠

 B型肝炎ウイルス(HBV)は血液・体液を介して感染する肝臓の病気です。HBVは急性肝炎の後に治癒する一過性の感染と生涯にわたり感染が継続する持続感染(キャリア)の2つに分かれます。キャリアの80~90%の人は肝臓の機能は安定していますが、残りの10~20%の人は慢性肝炎に移行し肝硬変、肝臓がんになる場合があります。
 全世界では約20億人の感染既往者と3億人のHBVキャリアがおり、毎年約60万人が肝疾患で死亡しています。日本ではHBVキャリアは国民の1%、130~150万人と推定されています。

 感染経路は「母子感染」と「水平感染」です。「母子感染」は出産時にキャリアのお母さんから血液を介して感染しますが、現在は出生時からの予防接種のおかげで赤ちゃんへの感染は激減しています。

 「水平感染」は父子感染などの家族内感染、保育園の集団感染、性交渉、医療従事者の針刺し事故による感染などがあります。園児の噛みつき、運動部での汗を介しての感染など、体液(唾液、汗、涙など)でも感染することがあります。キャリアの多くは自覚症状がないため、知らないうちに感染させてしまう可能性があります。
 成人の感染は一過性感染が多く、キャリアになる人は少ないですが、特に3歳未満での小児の感染はキャリアになりやすいことが分かっています。最近日本では欧米型の遺伝子タイプのHBVが、性的活動の高い若年成人を中心に増加しています。これは国際交流が盛んになったことによるもので、今後さらに感染者が増加すると予想されます。

 しかしながら、HBVはワクチンで予防できます。世界の多くの国では既に定期接種になっており、日本は遅れていましたが、平成28年10月から定期接種になります。対象年齢は平成28年4月以降に生まれた0歳児です。接種開始は生後2ヵ月からで、1回目と2回目は4週間間隔で接種し、3回目は1回目から20~24週経過した後に行います。
 特に注意が必要なのは、平成28年4月~7月に出生した赤ちゃんの場合です。10月からできる限り早く接種を開始し、1歳までに3回の接種を完了しないといけません。3回目が1歳を過ぎれば、任意接種となり、費用は自己負担になります。
 1歳以上で接種を希望する人は、任意接種で行います。他のワクチンとの同時接種も可能です。生後2ヵ月からの予防接種なので、早めの接種を心がけてください。ワクチンで大切な赤ちゃんを守りましょう。


「腰椎椎間板ヘルニア」について JCHO宇和島病院(賀古町) 河野 宗平

腰椎椎間板ヘルニアとは

図1 椎間板ヘルニアイメージ図 

 腰の骨は5つの腰椎からなり、それぞれの骨の間にある椎間板というクッションからできています。この椎間板はアンパンのような構造になっていて外側のパンの部分を繊維輪といい、その中に髄核というあんこ(粘性の組織)が入っています。これらの後方には神経が通っています。このパンの部分が裂けてあんこが出っ張って後方にある神経に悪さをして下肢の痛みやしびれ、麻痺などを起こすのが腰椎椎間板ヘルニアです。〈図1〉

 

 

 

 

 

 

痛みの原因について

 ヘルニアによる痛みの原因は神経を圧迫しているだけではなく、ヘルニアと神経の周囲に炎症がおきて神経を刺激して痛みがでると言われています。ですから椎間板ヘルニアの治療の第1は出っ張ったヘルニアを引っ込めることではなく、その部分の炎症をとることが大切です。

椎間板ヘルニアの診断方法

 診断は身体所見と画像所見とを合わせて診断します。
身体所見は下肢のしびれ、痛みの範囲、下肢の筋肉の力の出具合を調べます。画像検査はX線撮影、MRI、CT、椎間板造影、神経根造影などがあります。

椎間板ヘルニアの治療方法

 治療方法は手術しない方法(保存的療法)と手術する方法(手術療法)の2通りあります。
腰椎椎間板ヘルニアは手術しないと治らないと考えられがちですが、急性の腰椎椎間板ヘルニアの患者さんの80~90%は手術しなくても治ります。通常は、まず保存的治療から始めます。もし保存的治療を行っても痛みのために日常生活が困難であれば手術療法をお勧めします。手術療法は強い足の痛みから早く逃れるための手段です。保存的治療と手術治療では最終的な治りかたに差がないことがわかっています。しかし両者では痛みを有する期間が異なります。1日も早く痛みから解放されて日常生活に戻りたい人には手術療法を勧めています。

保存的治療について

 まずは痛いときには楽な姿勢で安静にすることも治療の1つです。
 痛みを緩和させたり、こわばった筋肉を和らげたりするために、超音波、低周波、温熱療法などの理学療法があります。
また、医師の処方する痛み止めを内服することも、炎症を抑える効果があります。それでも症状の改善がなかったり、初めから痛みがとても強い場合は注射を行います。注射は神経根ブロックや硬膜外ブロック、仙骨ブロックなどありますが、いずれも神経の周囲にステロイドなどの炎症を抑える薬を注射することで症状を和らげます。

手術療法について

 最も一般的な手術方法はヘルニア摘出術です。この方法は、神経を圧迫している突出したヘルニアを取り除く方法です。最近では内視鏡や顕微鏡を使ってヘルニア摘出術を行う方法があります。術後より下肢痛が改善することが多く、一般的に術後1~2日で歩行可能となり、7~10日で創部が治癒します。

緊急手術が必要な場合

 非常にまれですが、大きな椎間板ヘルニアが発生して神経を圧迫すると直腸や膀胱の機能が障害されます。このとき症状は股間にしびれを感じたり、便秘や尿が出しにくいという症状がでます。自分で尿を出せなくなることを尿閉と呼びますが、このような状態になったら緊急手術が必要ですので早期に医療機関に受診して下さい。

肝炎ウイルス検査を受けましょう 富山医院(鬼北町近永)富山 毅

 日本人の2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんで死亡します。そのがんの中でも確実に予防できるがんがあることはご存じでしょうか?それは肝臓がんです。肝臓がんはがんの中でもたちが悪く、年間3万人が死亡しています。愛媛県は、平成26年の肝臓がん年齢調整死亡率(75歳未満)が全国第1位でした。肝臓がんを予防できる時代になっているにもかかわらず、愛媛県では肝炎検査受診者数が1万人あたり35人と全国平均の42人より、かなり低いことが問題となっています。

 肝臓がんの約90%はウイルス性肝炎由来で、C型肝炎75%、B型肝炎15%、そのほか10%は脂肪性肝炎などとなっています。C型肝炎ウイルスに感染すると、体はそれを排除しようとしてウイルスを攻撃します。そのときに肝細胞を一緒に破壊してしまうため肝臓に炎症がおこり、肝炎になります。ウイルスに感染してから2週間~1ヵ月後に急性肝炎をおこし、その後約70%の人は治らずに慢性化します。いったん慢性化すると自然に治ることはほとんどなく、肝硬変や肝臓がんへと進展してしまいます。

 肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、肝炎になっても自覚症状はありません。そのため、気づかないまま20~30年で肝臓がんへと病気が進んでいきます。進むスピードは個人差があり、60歳をこえると肝臓がんになる確率が高くなります。病気が進むと治療も難しくなります。早めに検査して、感染していないか確認しましょう。

 C型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。1989年にC型肝炎ウイルスが発見される前は、感染している人の血液を輸血したり、汚染された注射器や注射針を使用してしまうことで感染していました。今は献血時の検査が確立し、使い捨ての注射器が普及したことなどから、医療行為で感染することはありません。ピアスやタトゥーは十分に消毒されていない器具を使うと感染の可能性があります。歯ブラシやカミソリの共用はさけて、外傷や皮膚炎、鼻血などはできるだけ自分で手当てするようにしましょう。

 肝炎ウイルス検査は数分で済む採血検査です。一般的な健診の肝機能検査では、肝炎ウイルス感染の有無はわかりません。保健所や指定医療機関で、無料で検査を受けることができます。

 日本人の40人に1人が、肝炎ウイルスに感染しているといわれています。C型肝炎の治療では、飲み薬の新薬が発売されるなど、治療が目まぐるしく進歩しています。できるだけ早く治療を始めることが何より大事なので、ぜひ一度、肝炎ウイルス検査を受けましょう。


妊娠中のエコー(超音波)検査について 寿レディースクリニック(寿町)萩山 正治

 産婦人科では妊娠から出産までエコー検査のお世話になります。エコーは、簡便・安全で胎児や子宮内の様子について多くの情報を与えてくれます。エコーには経腹エコー・経膣エコーがあり、また、カラードップラー・3D・4Dなどの機能が付いていてこれらを組み合わせて診断に使います。

妊娠確定までの3ステップ

 市販の妊娠検査薬で陽性でも正常の妊娠かどうかは、エコー検査によって次のことを確認します。

  1. ベビーの入っている袋(胎嚢)が、子宮内の正しい位置にあるか
  2. 胎嚢の中に胎芽という小さいベビーの確認(妊娠7週頃)
  3. 胎児心拍の確認

 1~3までが確認できれば、妊娠確定です。この時出産予定日を決めますが、最終月経や排卵日から計算する方法に加えて、エコーによって、胎児の頭殿長を測定して、より正確な予定日を決定します。健診時にはエコーを使って、毎回、胎児心音の確認をします。エコー検査には、妊婦健診時に行われる通常検査と、胎児の形態異常診断を目的とした胎児エコー検査の二つがあります。

 通常エコー検査
イ.妊娠初期(妊娠2ヵ月から4ヵ月)

 異所性妊娠(子宮外妊娠など)子宮内胎児死亡、胞状奇胎などの異常妊娠の有無をみます。
 胎児数の確認と双子の場合は膜性診断で、一卵性か二卵性などの診断をします。子宮筋腫や附属器腫瘍(卵巣腫瘍など)の有無をみて、腫瘍が見つかった場合は良性か悪性かを診断します。卵巣腫瘍の直径が5cm以内の時は、80%が黄体嚢胞などの良性の機能的嚢胞であり、妊娠16週までに、自然消失します。直径が10センチメートルを超えると破裂の可能性もあり、妊娠中でも手術を勧められることが多く、また悪性の場合は妊娠週数や大きさにかかわらず原則として手術となります。切迫流産による出血は、胎児心拍が確認できれば、90%以上が無事に育つことが分ってきました。妊娠12週までの胎児死亡の多くは、染色体異常が原因です。

ロ.妊娠中期(妊娠5ヵ月から7ヵ月)

 胎児発育の評価は、エコーで児頭大横径・大腿骨長で成長曲線をみます。つわりを乗り切った胎児はぐんぐん成長し、妊娠5ヵ月で胎児は身長15cm、体重300gとなり、エコーの4D機能で羊水の中を活発に運動している様子がみられ、妊婦さんも我が子の成長を実感することができます。一般的には妊娠6ヵ月までに、胎動も感じられるようになります。
 妊娠6ヵ月からは、胎児の推定体重を毎回測定して標準値と比較し、子宮内胎児発育不全(未熟児)の有無をチェックします。また、経膣エコーによる子宮頸管長の測定を妊娠20週頃に測定し、短縮している場合は早産のリスクが高まりますので、早産予防の治療が必要になる場合があります。

ハ.妊娠後期(8ヵ月~10ヵ月)

 妊娠8ヵ月で胎児は体重約1kg身長約35cmほどになり味覚が発達し甘味や苦みがわかってきます。また、聴覚が発達して外の音に反応するようになります。胎盤の位置を確認し、前置胎盤・低置胎盤の異常や羊水量の測定をします。そして、羊水過多症の場合、胎児の消化管の異常をチェックします。胎児の胎向をみて逆子や横位などを診断します。分娩時の異常出血の時に、エコー検査で常位胎盤早期剥離や低在位胎盤などの異常をチェックします。胎児心音の低下の時、カラードップラーで、臍帯巻絡の有無を検査するなど、出産までエコーのお世話になります。

胎児エコー検査

 出生前診断の1つでインフォームドコンセントの後に、実施する必要があります。通常のエコー検査でも、胎児に異常が見つかることがあり、この場合は高次施設へ紹介します。
 妊娠から出産まではマラソンにたとえるとスタートからゴールまでの長い道のりです。産科医は、妊婦さん全員が無事ゴールできますよう定期的な妊婦健診を行って、安産のお手伝いを支援していきます。

4Dエコー 12週胎児画像

 

 

 

 

 

 

 


認知症の話 善家脳神経クリニック(堀端町)善家 迪彦

 認知症の診断と治療は非常に難しく、認知症患者の7割を治せば名医と言われる。
 4大認知症とはアルツハイマー型(以下、Aと略)、レビー小体型(以下、Lと略)、前頭側頭型ピック(以下、Pと略)、脳血管障害性(以下、Vと略)である。その他に認知症をきたす病気は、少なくとも10以上はある神経内科の病気群(MSA、PSP、CBD、ALS など)、甲状腺機能低下症、ビタミンB欠乏症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などで、認知症に似ている精神科の病気(うつ病、統合失調症 など)も紛れ込んでくるので要注意である。


認知症には、次のような症状がみられる。

【中核症状】記憶、判断力、見当識などの障がい:認知症の本質的な症状
【周辺症状】中核症状から派生して環境などによって一時的に出現する症状で、次のような症状がみられる

  • 陽性症状:興奮、易怒、介護抵抗、徘徊、暴力、暴言、ひとり言、妄想、幻覚、、過食、不眠 など
  • 陰性症状:無言、無為、無動、うつ状態 など

例えば、「まじめな性格の人がなりやすい認知症は」の質問では、正解はLである。
更に、「やたら甘いものを好んで食べるようになったなら」の質問では、答えはPである。

 認知症の中核症状に対する薬は4つある。それぞれ違いがあり副作用も違う。ある薬1つとってもA、L、P、V、の4大認知症に対する至適容量は違う。至適容量を処方しても今度は患者さん1人1人の薬剤感受性が違う。
 さらに面倒なことは病気自体が経過中にAがLに次第に移行するものしないものがあり、LもPに次第に移行するものもある。 途中でLとPが50%づつという人もいる。Aの治療中にLの兆しがあれば、Lの治療法にすみやかに移行しなければならないし、LからPへの移行時も同じである。また、LとPの治療薬の両方を処方しなければならない人もある。
 従って、経験ある医師が効果を考えつつ投薬を行い、変転極まりないこの病気を常に監視していなければならない。
また、ある中核症状薬には、次のような副作用がみられる場合がある。

  1. 次第にパーキンソン病になり歩けなくなり、寝たきりになる
  2. 万引きをするようになる※警察と医師が連絡すれば犯罪にならない。
  3. 赤信号無視や高速道路の逆走をする
  4. 極まれに、徐脈・心停止を起こすなど

 認知症の周辺症状に対して向精神薬が使用されるが、この薬剤選択とさじ加減がまた難しい。多くの経験から、もうすでにそれぞれの認知症に第1、第2選択薬は決まっており、使用される向精神薬とその量も決まってきている。しかし、薬剤感受性は人それぞれで高血圧や高脂血症の薬とは違い、そのばらつき幅は大きい。
 介護施設で適切に中核症状と周辺症状が処理されないと、徘徊、暴言、暴行、妄想、不眠、便尿失禁などにほかの入居者も介護者も疲れ果てる。暴言暴行に対抗すると虐待と言われ、放置すると暴れ放題になる。管理者や経営者は心労で夜が寝れないこともある。

 最後に、薬をいろいろ変えても効無い患者が3割位いる。お手上げである。しかし薬物以外の治療法もある。


市立宇和島病院でロボット手術ができるようになりました 市立宇和島病院 泌尿器科(御殿町) 岡 明博

 早期の前立腺がんに対する治療として手術は重要な方法です。従来は下腹部を10~15cm切開して開腹前立腺全摘術を施行していました。1990年にフランスの医師らが発表した腹腔鏡による前立腺全摘術が世界に広まり、日本での保険適応は2006年から、当院では2010年に施設認定を取得し、開腹手術から移行してきました。

 腹腔鏡手術の利点は傷が小さいことです。前立腺手術の場合、お腹に5~10mm程度の穴を5~6ヵ所開け、内視鏡や手術器具を挿入し実施します。患者さんにとっては体に優しい低侵襲手術となりました。しかし、医師にとってはつらい部分も出てきました。体外から長い器具を挿入し手術をするので力を要します。一度開けた穴は動かせないので、切開、縫合するときに自由度が少なく、技術を要します。術者は横を向いて脇を開けた体勢になることが多く、翌日は腰痛と肩コリで大変です。技術習得の難しさや施設認定を受ける必要性などから、必ずしも普及しているとは言いがたいのが現状です。

 腹腔鏡手術支援ロボット:ダヴィンチはアメリカで開発されました。

  1. 患者さんにドッキングするアーム部分、
  2. それをコントロールするコンソール、
  3. 内視鏡やライトを制御するタワー

の3つで構成されます。
 従来の腹腔鏡手術では医師が直接持っていた内視鏡や手術器具をロボットアームに持たせ、術者は3Dモニタ―つきのコンソ―ルに座り、遠隔操作でロボットアームをコントロールして手術をします。これで医師にも低侵襲な手術となりました。
 ダヴィンチの特徴をもう少し詳しく説明すると、以下のとおりです。3D内視鏡で10倍に拡大された視野を確保できること。コントローラーの動きに対し、手術器具が動く実際の距離を縮小でき、緻密な操作ができること。手ぶれ補正機能があること。手術器具の先端に関節があり自由な方向に動かせ、その可動範囲が広いため、従来の腹腔鏡手術ではできない方向への切開、縫合が可能であることなどです。術者は患者さんのお腹の中に顔と手を直接挿入しているような感覚です。精密な手術が楽にできるようになり、医師の技術習得も容易となりました。また、器具が挿入されている1点を支点としてロボットアームが動くため、患者さんの腹壁へのダメージがより少なくなりました。がんの根治性を上げながら、しかも機能の温存も考慮できるというような精密な手術が、より低侵襲におこなえるようになったわけです。
腹腔鏡手術支援ロボットダヴィンチ
 日本では2012年に保険適応となりました。市立宇和島病院では2014年7月から稼働開始し、2015年12月末までに56例の前立腺全摘術を実施しました。大きなトラブルもなく、順調に経過しています。現在、保険適応があるのは前立腺がんの手術だけですが、2016年4月からは腎がんの部分切除に対して保険適応が拡大する予定です。
 少し中央とのタイムラグはありますが、また先端医療の1つがこの地域で可能となりました。「いつでも、どんな病気にも、高度医療を提供する病院をめざします。」それが市立宇和島病院の基本方針の1つです。