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医師会 健康講座121~130

印刷用ページを表示する掲載日:2016年2月29日更新

医師会 健康講座

多様性と標準化 中山内科胃腸科(堀端町)中山 和文

 2015年の春先、コレステロールの治療をしている人の間でちょっとした混乱が生じました。
 2013年にアメリカのガイドラインが「コレステロール摂取量を減らすことによって血中コレステロール値が低下するという証拠が数字として出せないことから、コレステロールの摂取制限を設けない」とし、これを受けて日本でも、2015年にそれまで推奨されていたコレステロール摂取量の数値目標が撤廃されたのです。
 このことがマスコミに取り上げられる過程で、あたかも食事療法は無意味であるといった誤解が生じ、なかにはコレステロールは下げる必要はないといった極論まで出てくる始末で、これに影響されて実際に処方中止を希望する人が現れる事態となりました。背景には他人に管理される不快感や、症状もないのに薬を飲み続けることへの心理的な抵抗があるのかもしれません。

 しかし、私たちは愛媛県が心血管疾患死亡率全国ワースト1である事実を重く受け止めなければなりません。高コレステロールが動脈硬化性疾患の危険因子であり、これを適正に下げることで心筋梗塞など心血管性疾患の危険が減少することはゆるぎないことです。一連の騒ぎはこれまで食事療法の目標の1つとして設定されていたコレステロール摂取量に、現時点で科学的な根拠が得られないので取り下げる、と言っているに過ぎません。
 そもそもガイドラインは科学的根拠に基づいて作成されるもので、その拠り所となる医学的な知見は日々更新されるので、その都度修正することは正しいありかたです。つまりガイドラインは作成した時点での医学的な情報に過ぎず、医療を行う上で十分尊重すべきではあってもの絶対的なものではありません。一方、私たち医療者にはガイドラインに準拠しつつ個々の患者さんに即した対応が望まれます。別の見方をすれば、多様な患者さんへの対応が恣意的にならないようにガイドラインが存在する、さらに穿った見方をすれば、多様化に対応しなければならない不安が拠り所となる標準を必要としている、とも言えます。

 実際の診療では、コレステロールが正常値を超えたからといってすべての人が薬を飲まなければいけないわけではありません。医師はガイドラインに準拠してコレステロール値だけではなく、年齢、性別、糖尿病などの合併症や心筋梗塞、狭心症などの心血管疾患の既往の有無、喫煙などを考慮して1人ひとりのリスクに応じた治療方針を決めます。同じコレステロール値でも薬を処方されている人もいれば経過観察のみの人もいるのはそのためです。
 ガイドラインをよく見ると、食事療法としてコレステロールの摂取制限以外にもこと細かな指示が記載されていますが、多忙な日常生活でこれを実行できる立派な人が果たしてどれ程いるでしょうか。私たちはそんなことよりできることから取り組んでみてはどうでしょうか。すべての人が食事療法で改善するわけではないし、具体的な数値目標もありません。それでも、コレステロールの摂取を控えてみることは試みてよいし、思うように下がらず医師から服薬を勧められたら飲めばよいのです。

 数字を下げることが目的ではなく心筋梗塞などを予防することが目標です。その意味では大筋でよい方向に向かえばよいのではないでしょうか。この大筋で正しいというのが大切で、私たち人間は厳密な科学的根拠などなくても、危険を避けて概ね正しい道を選択する能力が備わっていると信じるのは楽天的すぎるでしょうか。高コレステロールを指摘されたらまずかかりつけ医に相談してみてください。


糖尿病の治療目標と糖質制限 松浦内科医院(並松)松浦 良樹(糖尿病専門医)

 現在、日本の糖尿病の患者さんは約950万人で増加しており、10人に1人の割合になりつつあります。
 糖尿病学会の改定により、2012年からHbA1c(1~2ヵ月の血糖値の平均)の目標値が変更となりました。血糖の正常化を目的とするならHbA1cを6.0未満、合併症予防のためであれば7.0未満、治療の困難な場合は8.0未満になり、以前の目標値よりも厳しくなりましたが、数値的には6、7、8と非常に覚えやすくなりました。
 ただ、HbA1cの目標値は単なる数値目標ではなく、年齢、病歴、食生活、臓器障がい、低血糖の危険性など、患者さん個人の背景を考えて、目標値を決めることが大切です。

 この中で忘れがちなのが低血糖の危険性です。糖尿病の患者さんは血糖が高いこと、HbA1cが高いことは気にしますが、低ければ良いと思う人がいます。しかし、HbA1cが急激に低くなることや、低すぎることは問題です。血糖が高くても死亡しませんが、血糖が低ければ(高くてもですが)合併症が進行することがあり、ときに意識障がいを起こし死亡することまであるからです。
 ちなみに、日本で意識障がいで倒れている人がいたら、呼吸状態、循環状態を確認し、AEDを使用したりしますが、米国で最初にすることは、循環状態のチェックはもちろんですが、低血糖を考えてのブドウ糖の静脈注射です。こういった救急での対処は、米国がいかに低血糖を重視しているかのあらわれでもあります。

 ところで、最近の食事療法では、糖質制限もみられます。糖質制限をすることでHbA1cが低下することは、本院でも確認し食事療法の一部としてアドバイスも行っています。HbA1cを下げる努力をするために、厳しい食事療法を強いられてきた患者さんにとって、糖質制限でHbA1cが低下することは非常にありがたいことでしょう。
 ただし、糖尿病の患者さんは糖質制限をするときには、必ず医師に相談をしてください。実際に自己判断で糖質制限をし、低血糖を起こしてしまい、失明をしたり、死亡したりするケースが報告されています。

 健康な人が糖質制限をすると、血糖が低下しエネルギーがなくなるため、力が入らない、続かないなどの体力の低下があらわれたりします。また、高齢者が糖質制限をすると、そのまま食事自体のカロリーが減るため体力自体がなくなり体重減少、免疫力低下にもつながります。
 糖質制限をして体力が続かなくなってきているなど、覚えがある人は要注意です。糖質制限では体力低下を避けるために、糖尿病学会では注意しており、病院・診療所では個人の食事や運動量などを考えながら指導する必要があります。
 糖尿病の患者さんが糖質制限をするときは、HbA1cが良好であっても、1度は必ず医師や専門医に相談しましょう。


ギャンブル依存症~ 「否認」の病気の横綱 ~ (公財)正光会 宇和島病院(柿原) 渡部 三郎

1番多い精神疾患

 2014年に行われた厚生労働省研究班の調査によると、ギャンブル依存症に罹病している成人は男性で438万人(8.7%)、女性で98万人(1.8%)いると推計されました。この有病率の高さは世界一であり、日本で1番多い精神疾患がギャンブル依存症ということになります。この推計を宇和島市に当てはめてみると約4,000人という恐るべき数字となります。そのうち治療を受けている人は30人弱と、未治療率(必要な治療を受けていない人の割合)は99%を越えています。アルコール依存症に劣らず、否認の病気の代表格です。
 また同調査では、ネット依存は421万人、アルコール依存症は109万人と推計されました。

ギャンブル依存症とは

 依存症(アディクション)は、

  1. 物質依存
  2. プロセス依存
  3. 関係依存

の3つに分けられます。

 よく知られているアルコール依存症や覚醒剤・危険ドラッグなどの精神作用物質への「物質依存」。パチンコや競輪などのギャンブル、買い物、インターネットやゲーム、自傷や摂食障がい、病的窃盗などの行為に対する「プロセス依存」。家庭内暴力や虐待、親密な人との破壊的関係、共依存、恋愛依存などの人間関係の依存である「関係依存」です。
 パチンコ・スロットが、日本のギャンブル依存症の中心を占めます。青年期に興味本位に始めたパチスロに、次第に心を奪われ、やめることができなくなります。賭け金が増え、しないといらだち、苦痛なときや、してはならないときにやってしまいます。結婚したり子どもができてもやめることができません。負けた金をギャンブルで取り戻そうとして傷口を大きくします。大切な家族や友人との人間関係を壊しても自分の意志でコントロールできないのは病気だからです。2大症状は「嘘」と「借金」です。どうにもならなくなり、窃盗などの犯罪を起こしたり、自殺傾向が高まるまで病気が進行することも珍しくありません。

脳の病気です

 精神医学の代表的な診断分類で、ギャンブル依存症はアルコールや薬物依存症と同じグループに入れられることになりました。ギャンブル依存症者の脳の神経細胞に起こる変化が薬物依存症者の変化と同じであることが分かってきたためです。
 人類が生存し続け、より良く生きるために喜びや満足を与える脳内報酬系という神経回路があります。その回路を依存性の物質や行為によってハイジャックされ暴走を続けるため、意志や理性ではコントロールできなくなるのが依存症という病気の本態です。そのため、大切な財産を失っているのにやめることができず、しばらくやめていても1度手を出すとやめる前のひどい状態に逆戻りするのです。

治療と回復・問合先

 病気ですから治療が必要です。また回復することができます。そこで専門医療が必要とされます。断ギャンブル(やめ続け・回復し続けること)に最も重要な自助グループ(GA宇和島グループ)が生まれて7年になります。
 周りも巻き込まれ、借金の尻ぬぐいを続けても改善せず、今まで困難であったギャンブル依存症からの回復に光が見えてきました。

問合先

宇和島市役所福祉課障害福祉係
Tel0895-24-1111内線2116)


 

予防接種を受けましょう こばやし小児科(長堀) 小林 仁史

 予防接種法がたびたび改正されて、多くの予防接種が受けられるようになってきました。

予防接種の種類

全額公費で受ける予防接種

(子どもの定期接種)

  • ヒブ
  • 肺炎球菌
  • 4種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ=小児まひ)
  • はしか風疹混合
  • BCG(結核)
  • 日本脳炎
  • 水ぼうそう(帯状疱疹=あわよう)
一部公費負担で、高齢者のみを対象とした予防接種
  • インフルエンザ
  • 肺炎球菌
全額自己負担で受ける予防接種
  • おたふく風邪
  • A型肝炎
  • B型肝炎
  • インフルエンザ
  • 接種年齢を外れた定期接種のワクチンの一部
  • ロタウイルス(乳児のみを対象。激しい白色下痢と嘔吐で脱水症になりやすい)
海外渡航時に勧める予防接種
  • 黄熱病
  • 狂犬病
  • 髄膜炎菌性髄膜炎
  • そのほか

※ヒトパピローマウイルスワクチン(子宮頸がん)は希望すれば公費で接種できますが、副作用の問題があって、今は積極的には勧められていません。

 予防接種は、多くの病気の急性の症状を予防するだけではありません。気づかないうちに進行する難聴、不妊症(おたふく風邪)や長い経過の後に発症するがん(B型肝炎・ヒトパピローマウイルス)、帯状疱疹後神経痛(水ぼうそう)、亜急性硬化性全脳炎(はしか)を予防します。また、お腹の赤ちゃんに心臓奇形や難聴、白内障、精神運動発達遅滞がみられる先天風疹症候群、けいれん、まひ、知能障がい(脳脊髄膜炎=ヒブ・肺炎球菌・日本脳炎・インフルエンザ脳症)も予防します。
 予防接種は、体に病原体の一部を入れて軽く反応させて、その後に病原体が入ってきたとき(感染したとき)に素早く対抗できる抗体を作ることを目的にしています。軽い熱が出たり、赤くはれたりする軽微な副反応は普通に起こりますが、重大な副作用はめったに起こりません。しかし、ゼロではありません。重大な副作用をゼロに近づけるために不断の研究努力が続けられています。

予防接種の効果

予防接種には、副作用の危険はありますが、それとは比較にならない大きな効果が期待されます。

  1. 病気を予防し、熱や痛み、激しい咳などの辛い症状が出ません。病気による死亡を無くし、後遺障がいも予防接種の副作用に比べると格段に少なく軽いものです。また、治療費や看護にかかる保護者の経済的・時間的負担を軽減し個人や自治体や国の医療費を節約できます。
  2. 感染症は都合の悪いときや体調のすぐれないときにも突然かかります。予防接種は、元気なとき、都合のよいときを選んで受けることができます。
  3. 感染症やその後遺症は、原則自己負担で治療を受けなければなりませんが、予防接種では、万一副作用が出たときの治療には公的補償が受けられます。
  4. 海外渡航時または子どもの将来の進路によっては、予防接種を受けた証明が必要なことがあります(医療・教育・介護・養護・保育・保健など)。

 乳児期に受ける予防接種は、種類も回数も多く、1つずつ受けていられないことがありますが、同時複数接種(2~4種類のワクチンを同時に接種する)という方法もありますので、かかりつけの医師に相談してください。
 予防接種は個人を守り、家族や周囲の人を含めた社会を守るものです。感染症の制圧には、個人防衛(手洗いやうがい、マスク、予防接種)、社会的防衛(公衆衛生上の施策、検疫などの水際作戦、予防接種とその副作用治療に対する公的支援)、WHOの国際的な活動と衛生教育の充実が一体となって実行されることが大切です。
 近年では、エボラ出血熱、マーズコロナウイルス、エイズ、新型インフルエンザなど恐ろしい感染症がありますが、早く制圧されることが切望されます。
 

 予防接種で防げる病気は、予防接種で防ぎましょう。


早起きと健康 篠原医院(鬼北町近永)篠原 洋伸

 健昔からのことわざに、「早起きは三文の徳」というのがあります。その意味は、朝早く起きると健康にもいいし、必ずいくらかの利益があり、また、何か自分にとって良いことが得られる、ということです。
今回は、早起きに関係した、ザリヤートカ(ロシア語で、『充電トレーニング』と訳されています)とその応用について、お話ししたいと思います。


 ザリヤートカとは、1950年代の終わりころに、日本の男子体操の強化策として、旧ソ連のスポーツ生理学から導入された朝の充電トレーニングのことです。この充電トレーニングの効果によって、ローマオリンピックでは日本の体操選手のコンディションの調整に大きな役割を果たし、金メダルを獲得し、現在も日本の体操界では広く続けられています。
 朝のトレーニングというと、いわゆる「朝練」と勘違いする人が多くいますが、この充電トレーニングは、名のごとく起床したばかりの空になっている体(バッテリー)に充電して、これからの1日の活動に資そうとするのが本義であり、30分ほどの時間で筋肉やじん帯、肺、あるいは神経系に適度な刺激を与え、目覚めさせようとするものであり、本来、保健的意義が前景に立っています。


 では、健康とはどういうことでしょう。「健康とは、身体的、精神的、かつ社会的に完全に良好な状態であることであって、ただ単に病気でないとか虚弱でないとかいうことではない」というのがWHO(世界保健機構)による健康の定義です。私たちは普段、健康を意識して、いろいろな食事療法や運動療法を行い、病気になれば医療機関を受診し、投薬などの治療を受けます。そもそも、私たち人間は自然治癒力を持っていて、それが正常に働いてくれれば、そんなに病気になるものではなく、仮に病気にかかってもひどくならずに治っていきます。この自然治癒力は、免疫力と言ってもいいと思います。
 では、免疫力を高めるためにはどのようにしたらいいでしょうか。昔から、早起きをして体を動かすことが健康に良いということは周知の事実であり、ラジオ体操や朝の散歩などが行われています。また、朝日を浴びるだけでも免疫力が高まるとも言われています。
 最近、肉体の調整を主たる目的としたザリヤートカに、人間を有機的に丸ごと全体としてとらえようとする東洋医学の考えを取り入れたトレーニング(朝の心身調整プログラム)が考え出されました。つまり、体・気・心の3つのレベルをそれぞれ、体操、調気法、瞑想によって調えたほうがさらに効果が上がるのではないかという考えです。時間は、ザリヤートカと同じ30分程度で、まず10分体操で体を調え、次の10分では調気法で気を調え、最後の10分は瞑想をして心を調えるといった具合です。
忙しい朝に、30分も時間がとれないという人も、半分の5分ずつ合わせて15分くらいは、自分の心身の調整に時間をかけてもいいのではないでしょうか。もちろん時間に余裕があるのなら、それぞれにたっぷりと時間をかければいいですし、自分に必要だと思うところに時間を多くかけても良いと思います。

 具体的に何をしたらいいかは難しく考えず、それぞれストレッチ・ラジオ体操・散歩・腹式呼吸・瞑想(座禅を組んでもいいですが、体を動かしているときや腹式呼吸の際に、自分の体の動きや息の流れを意識するだけで瞑想と同じような効果があるそうです)などを自分なりに工夫をして行えばいいと思います。
 皆さん、明日から少し早起きをして、健やかな1日を過ごしてみませんか。


溶連菌 やくしじこどもクリニック(泉町) 薬師寺 直之

 小さなお子さんをお持ちの方は、1度はこの名前を聞いたことがあると思います。また、ご自身も小さいときにこの病気にかかったことがある方も多いのではないでしょうか。では、溶連菌とはいったいどのようなものでしょう。
 もともとは、バイ菌の略称で、「A群β溶血性連鎖球菌」という名前の一部を取り出してつけられたものです。なぜ、風邪などの原因ウィルスや細菌の中でも、溶連菌だけわざわざ略称までつけられて取り上げられるのでしょう。それは、この菌が引き起こす、困った問題があるからです。

 まず始めに、この菌が引き起こす病気の中で、1番多いケースである咽頭炎のときにはどのような症状が出るのでしょう。咽頭の溶連菌感染症は、春先から初夏にかけて流行することが多く、急なのどの痛みと発熱で気づかれることが多いようです。幼児では、発熱がみられないこともあり、単にのどの痛みを訴えるだけの場合もあります。ここまでは普通の風邪と症状的にはあまり変わりがありません。しかし、のどを診ると真っ赤に腫れ上がり、扁桃に膿が付いたりするような非常に強い病変が現れることが多く、普通の風邪よりも粘膜の症状が強く出ます。
 また、ひどい場合は、吐き気や腹痛、小さなブツブツが首から胸やお腹にかけて見られます。発疹は、ひどくなると全身に広がりかゆみをともないます。また、舌の表面がざらざらになって腫れ上がり、典型的な場合はイチゴに例えられるような状態になります。このように、普通の風邪よりも粘膜や皮膚の病変をともなう場合が多いようです。


 では、このようなブツブツが出るから、手足口病のように普通の風邪と分けられているのでしょうか。溶連菌感染症をほかの病気と分けて取り上げるのは、直接溶連菌が引き起こす病変が原因ではありません。溶連菌自体の風邪症状が落ち着いた後、溶連菌が引き起こした免疫反応(体を守る働き)が腎臓や心臓、関節などに影響し、非常に厄介な病気(=困った問題)が発症してしまうのです。
 例えば、腎臓を標的とした続発症である急性腎炎の場合は、頭痛、食欲不振、むくみ、などが急激に出現し、血尿と蛋白尿、尿量減少、血圧上昇があり、発病初期は腎機能も低下します。主要な症状が回復するまでの1ヵ月間程度は入院が必要ですし、6ヵ月程度尿の異常が続くこともあります。
 これらの続発症を予防するには、ほかの細菌やウィルスと区別することが必要となるため、溶連菌の検査を行います。溶連菌の検査で陽性になった場合には、免疫反応が過剰に起こらないように、一般には10日間ほどの抗生剤内服を行います(抗生剤の種類によって投薬期間は違います)。もともと急性期の溶連菌の感染力は強く、家庭内での感染は50%以上だと言われています。また、続発症の恐れがある感染症でもあります。そのため、学校保険法では第3種の感染症として扱われています。
 とはいえ、抗生剤内服により1~2日で解熱し、のどの痛みなどの症状も改善しますので、抗生剤開始24時間で明らかな異常(発熱、発疹)がなければ通園・登校が可能になります。また、のどの痛み、発疹、発熱などがなくなれば、特別安静を保つ必要はありません。しかし、症状がなくなり学校に行けるようになったからといって、抗生剤の内服を中止してしまうと続発症が起きる可能性が高くなります。

 このように、溶連菌はさほど強い菌ではありませんが、治療を怠ると長期間の治療が必要になる病気になってしまう可能性があります。毎年のように、溶連菌の流行は起きています。その上、はしかや水ぼうそうのように1度かかれば2度とかからないという病気ではありません。小さなお子さんが10日間の内服を続けることはなかなか難しいことですが、頑張って服薬を続けましょう。

虫垂炎と手術の美学  市立宇和島病院(御殿町)今井 良典

 今回は、みなさんも1度は聞いたことのある病気「急性虫垂炎」について解説します。知っているようで、実はよく知らない急性虫垂炎、どのようなイメージをもっていますか?急にお腹が痛くなるありふれた病気…、軽い場合は薬で散らす…、悪化すれば手術しなければならない…といったところでしょうか。俗に「盲腸」と言ったりもしますが、「盲腸になって緊急手術をした…」という方もたくさんいるのではないかと思います。
 5歳くらいの幼児から100歳を越える超高齢者まで誰にでも発症する可能性があり、珍しい病気ではありません。しかし、急にお腹が痛くなる病気は数多く存在し、実は診断の難しい疾患でもあり、「急性」の名のとおり早急に診断し、時期を逸しないように速やかに治療を開始することが必要とされます。代表的な症状は右下腹部痛ですが、みぞおち付近の痛みが初期症状である場合も多く、食欲不振、発熱といった風邪や胃腸炎に似た症状も認めるため、診断に苦慮することもあります。昔から「たかが盲腸、されど盲腸」などと言われ、手術のタイミングが遅れると腹部に大きな傷跡が残ったり、お腹の中に膿などが溜まる合併症を併発したり、最悪の場合は腹膜炎や敗血症をきたし重篤な状態となる恐れもあります。現在ではレントゲン検査の精密CT撮影を活用し速やかに診断ができるようになってきましたが、腹痛を我慢しすぎるあまり患者様自身の病院受診が遅れ、診断・治療開始が遅くなり、結果的に重症化する症例も少なくありません。

 ごくありふれた病気だからこそ、正確に診断し、手際よく治療し、速やかに社会復帰を目指すことが求められますが、最新の虫垂炎治療には、さらに「美しくきれいに治す」という要望が加わってきました。
 虫垂炎は10〜20歳代の若年発症も多く、特に若い女性ではできるだけ目立たない傷での手術が望まれます。そこで、当院では最新虫垂炎治療として2011年より「単孔式腹腔鏡下虫垂切除術」を開始しました。「単孔式」とは、ヒトには必ず存在する『凹み』であるおヘソに小さな孔をあけて行う手術を意味します。従来は右下腹部を5cm程度切開し手術を行っていましたが、この「単孔式腹腔鏡下虫垂切除術」ではおヘソの凹みの中だけを約1〜2cm程度切開し、腹腔鏡と呼ばれる細長いカメラ(内視鏡)を挿入し、炎症を起こしている虫垂を切除します。おヘソの中の傷は全く目立たず、手術をした形跡すら残らないこともあります。さらに、腹腔鏡でお腹全体を観察できるため、腹痛の原因となるほかの病気の鑑別が可能です。特に女性では婦人科関連疾患がないかどうかを判断することができるという利点もあります。
 愛媛県では当院が初の導入となった「単孔式腹腔鏡下虫垂切除術」ですが、全国でも徐々に広がりつつあります。小児や若年の患者様を中心にこの手術を行い、多くの方々に喜ばれていますが、すべての虫垂炎の方に施行できる訳ではありません。炎症がひどくならないうちにできるだけ早く虫垂炎と診断することが条件です。早期診断早期治療のためにも、急な腹痛を自覚し、もしかして盲腸?と思ったら、早めに医療機関を受診しましょう。

 虫垂炎に限ったことではありませんが、最新の外科手術には安全確実かつ美しくきれいに治すことが求められています。外科治療には縁遠いと思っていた美容や整容性に対する関心が徐々に高まる中、当院ではその要望にお答えするべく最新手術で対応しています。ご興味のある方はお気軽にご相談ください。


アレルゲン免疫療法 たけだ耳鼻咽喉医院(丸之内) 竹田 一彦

 「アレルギー」とは本来、体の外から入ってきた細菌やウィルスを防いだり、体の中でできたがん細胞を排除したりするのに不可欠な免疫反応が、花粉、ダニ、ほこり、食べものなどに対して過剰に起こることを言います。過剰な免疫反応の原因となる花粉などを「アレルゲン」と言います。
 現在、アレルギー疾患に対する治療のほとんどは、出ている症状を抑える「対症療法」です。一方、アレルギーの作用機序に直接働きかけて根治を目指して行う治療法に「アレルゲン免疫療法」があります。以前は、「減感作療法」と呼ばれていたものです。

 アレルゲン免疫療法の原理は、少量のアレルゲンを体内に年単位で持続的に投与することで体を慣れさせて、実際に外界からアレルゲンが侵入してきてもアレルギー反応を起こさなくなる(減感作)というものです。以前は皮下注射で行われていたため、その都度通院が必要でした。今回は、昨年10月に発売された薬剤を使用する「スギ花粉症に対する舌下免疫療法」についてご説明します。
 舌下免疫療法は、皮下注射ではなく舌の下に薬液を滴下することにより減感作を行うため、ご自宅で簡単に行える便利な治療法と言えます。
 しかし、この治療法には何点か気を付けていただかなくてはならない事項があります。

1、必ず良くなるという保証がないこと

約2割の人は効果がありません。どのような人が効果を得られないか、という予測もできません。

2、少なくとも3年間、毎日、舌の下に決められた量の薬液を落とし続けなければならないこと。

アナフィラキシーショックと呼ばれるような命にかかわる副作用が絶対に生じないとは言えません。

3、副作用の発生する場所が病院外であるということに注意が必要です。

以上の3点は、絶対にご理解いただかなければなりません。

 また、花粉飛散期(1~5月)には治療を開始できないこと。血液検査によるスギ花粉症の確認が必要であること。薬液を処方できる医師が限定されており、初回は総合病院を受診していただかなければならないこと。治療できる患者さんは、12歳から65歳までであることなど、条件が決められています。

 このように厳しいことを言いましたが、厚生労働省に認可された薬ですし、舌下免疫療法はヨーロッパでは盛んに行われているようです。ご興味・ご関心のある方は、一度、耳鼻咽喉科へお越しください。


「ロコモ」、知っていますか? 河野整形外科クリニック(丸之内) 河野 洋平

 運動器の障がいのために移動機能の低下をきたした状態を「ロコモティブシンドローム」〈略称:ロコモ、和名:運動器症候群〉(以下、ロコモ)と言います。進行すると介護が必要になるリスクが高くなります。
ロコモとは筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板などといった運動器のいずれか、もしくは複数に障がいが起き、歩行や日常生活に何らかの障がいをきたしている状態です。

 運動器障害にはいろいろな疾患があります。例えば、骨粗しょう症、大腿骨近位部骨折、脊椎椎体骨折、変形性膝関節症、変形性股関節症、腰部脊柱管狭窄症、サルコペニア(加齢性筋肉減少症)などが含まれます。このような疾患が進行したり、重複したりすると、要介護の状態になり、自分の足で歩けなくなってしまいます。
 2007年、日本整形外科学会は人類が経験したことのない超高齢化社会を見据え、このロコモという概念を提唱しました。
自分がロコモになっているかチェックするにはロコチェックというアイテムがあります。以下の7つのチェック項目があります。
1つでもチェックがあればロコモの心配があります。その程度を見る「ロコモ度テスト」、その予防の体操を「ロコトレ」といいます。ロコトレの基本はスクワットと片脚立ちです。できない人は無理しないでテーブルに手を着いて、椅子からの立ち上がりを練習してみてください。詳しいことを知りたい方は主治医の先生に尋ねてみてください。パンフレットなどを使って説明してくれます。また、パソコンやスマホで「ロコモ」を検索してみてください。簡単にチェックの仕方、体操の内容を知ることができます。

 いつまでも自分の足で歩き続けるためにロコモを予防し、健康寿命を延ばしていくことが今、大切になっています。さあ、皆で頑張りましょう。

ロコチェック 7項目

  1. 片脚立ちで靴下がはけない
  2. 家の中でつまずいたり、滑っ たりする
  3. 階段を上るのに手すりがいる
  4. 家のやや重い仕事が困難(掃除機の使用、布団の上げ下 ろし)
  5. 2kg程度の買い物をして持ち 帰るのが困難
  6. 15分くらい続けて歩けない
  7. 横断歩道を青信号で渡りきれ ない

ロコモティブシンドロームの概念図

ロコモティブシンドローム概念図


高血圧症、誤解がないように! 松澤循環器科内科(天神町) 松澤 誠

 人間の体にとって、血圧とは酸素や栄養分を組織や臓器に送るための重要な仕組みです。血圧は高くても短い時間でみると症状はありませんし、診察しても異常はみられません。しかし、高血圧が何年も続くと血管に悪影響がおよび、脳卒中、心筋梗塞、そして腎臓病を起こし、大変なことになります。高血圧は今症状があるかどうかで判断する病気ではないのです。
 昨年春に、人間ドック学会から150万人のドック健診者から健康な1万5,000人を選び出し、その血圧値に基づいて、正常血圧、高血圧を分けようとする考えがマスコミで報告され、混乱が起きました。示された血圧の正常値は、収縮期血圧147mmHg以下、拡張期血圧94mmHg以下で、日本高血圧学会の血圧分類では、一部の1度高血圧の方が正常と判断されることになります。すなわち、いままで指摘されているよりも、高血圧の基準値が高いとされたのです。
 この報道は、新聞報道で大々的に取り扱われたばかりでなく、NHKでも報道されました。たくさんの患者さんから、血圧の基準が変わったそうですね、とお尋ねを受け、驚きました。


 これは、検査の基準値と言われているものには「基準範囲」と「臨床判断値」があるのですが、両者は意味するところが全く違っており、明確に区別すべきものであるということです。すなわち、先般の人間ドック学会が発表したのは「基準範囲」で、これは多くの健常人から得られた検査値を集めて、その分布の中央95%を含む数値範囲を統計学的に算出したものであり、疾病の診断、将来の疾病発症の予測、治療の目標などの目的に使用するのは難しいというのが公式の見解です。
 また一方で、各種専門学会などで提唱されている診断基準の中で用いられている検査の基準値は「臨床判断値」であり、高血圧学会の血圧分類の診断基準に記載されているものでは、疾学的調査研究に基づいて将来の血管病の発症が予測され、予防医学的な対応が要求される検査の閾値、つまり予防医学的閾値という代表的な臨床判断値といえるものです。
今回の人間ドック学会の示したのは、健康な人たちについての統計学的な話であり、その人たちが5年、10年、20年先に病気にならないという意味ではありません。その報告のために選ばれた、とりわけ健康な人以外の99%の人については、まったく述べられていません。今では、人間ドック学会の基準値作成方法は、高血圧の診断には用い得ない方法であることを人間ドック学会も認めており、すでに訂正されています。


 しかし、新聞をはじめとして報道はセンセーショナルに行われましたが、上記の訂正報道などを僕は見た覚えがありません。マスコミの無責任さを感じます。先の報道を見ただけの人は、今でもそのまま高血圧症を勘違いしているのではないでしょうか。大事な健康の話しです、くれぐれも誤解のないようにお願いします。