本文
市指定有形文化財(工芸品)
三島神社本殿狛犬・獅子 一対
三島神社は、社記によると大同元(八〇六)年に大三島の大山祇神社より勧請し、文永一一(一二七四)年に現在地に鎮座ましましたと伝える。その後、永仁五(一二九七)年及び永正一五(一五一八)年に社殿を再建し、現在の本殿は元文二(一七三七)年に造営されたものである。
三島神社本殿に奉安されてきた狛犬一対は、形式上、室町時代中期の造像と考えられる。
正面より見て右側に安置されているのは、無角阿形の獅子で、左側のものが一角吽形の狛犬である。獅子と狛犬を組み合わせて一対とした中世の標準作とも言うべき木造狛犬である。
両像とも高さ五五cm、幅二三cm前足を直立させて姿勢よく坐しており、本殿内陣側の前足(阿形は右足、吽形は左足)をやや前に踏み出し、頭部を礼拝者側に向けている。前足を直立させることのほかに、頭部の幅が肩幅より狭いこと、顔貌がひょうきんなこと、たてがみが体躯に密着して躍動感が少ないこと、やや猫背ではあるが背中が急勾配に立ち上がっていることなど、室町時代の狛犬の特色がよく表れている。腰部のくびれも強く、全体の姿は美しい。
保存状況は良好であるが、別木となっていた耳が欠失するなど、わずかな破損が見られる。また当初は彩色が施されていたが、現状では下地の白土が残るだけである。
この狛犬は、阿形の獅子と吽形の狛犬を組み合わせた室町時代の標準作であり、美術的にも優れており、保存状況も良好である。
一角吽形の狛犬
無角阿形の獅子