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市指定有形文化財(工芸品)
茶糸威五枚胴具足 一領
伊達政宗所用と伝えられるこの具足は、大正五(一九一六)年宇和島伊達家が入手したといわれ、当世具足(室町以後)の特徴を数多く伝えている。
この具足は、桃山末期か江戸初期に、明珍派の甲冑師によって制作されたと推定される。弦月形の前立を、下部に桧垣という金物を据えた一七間筋兜鉢に配し、胴は黒塗五枚胴で、別名、仙台(雪下)胴ともいう。それに四段下りの錏、五段下りの喉輪、九間五段下りの草摺、五段下りの佩楯、これらの黒塗小札を茶糸に威し、小田籠手と大立挙・臑当を備えている。
また、動きやすいように九間の草摺にし、格子鎖と総鎖を併用した右籠手、総鎖を使用した左籠手、五枚胴のそれぞれと兜鉢の左右、後方の三か所に残る鉄砲の試し打ちのあることは注目すべき点である。
このように、実戦を目的とした具足であり、技術の優秀さと、戦国武将の配慮の深さを物語っている。
なお、革所には花と獅子の染革をはり、隅を菖蒲の染革と水引で包み、牡丹の透し彫りをほどこした金物を据え、鋲も堅三引両と仙台笹の紋鋲、小桜鋲の三種類を数多く使用し、菱縫には緋糸を、家地には鳳凰と竜に桐をあしらった紺地の錦を用いるなど華麗さも備えている。