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市指定 木造十一面観音立像

印刷用ページを表示する 記事ID:0002261 更新日:2015年7月1日更新

市指定有形文化財(彫刻)

木造十一面観音立像木造十一面観音立像 一躯

  • 所在地 津島町山財
  • 所有者 山財谷自治会
  • 指定日 昭和三八年一〇月一日

 この十一面観音立像は山財谷の庵寺に安置されていたが、庵寺が老朽化したので平成十一年に解体されたので、現在は山財谷自治会の民家に安置されている。

 十一面観音は、七観音の中の一つで、衆生に悟りの法を説く如来に対し、現世利益の救済をするのが観音の役目である。十一面観音像は奈良中期ごろから造られた。

 十一の顔を持つというのがこの観音の特徴で、十一面の配列は正面三面が慈悲、左側面三面が忿怒、右側面三面が牙をむき、背後一面は大笑。計一〇面だが、本面を合わせて十一面ということになる。頂上にあるのは阿弥陀仏面である。

 この十一面観音は、三三年に一回開帳の秘仏で、それ以外に開帳すると目がつぶれるという伝説がある。故に、是非もなく開帳するときは、目をつぶって「私は目が見えません。」といってから拝観したという。

 神戸大学毛利久博士は『愛媛県南部の彫刻』の中で、文化財としての価値を高く評価されている。この十一面観音像は、一木造りの立像で背刳は見えない。像高八七cm、肩の肉づきがよく丸型で、やや前かがみ、正面のスタイルはよい。条帛・天衣・裳をつけているが、その衣文の彫り、刀痕は下部ほど粗野である。装飾品の金具は巧緻に出来ている。仏像は鎌倉時代の作といわれている。

 頭の頂上仏面及び一〇面の化仏の彫りは、精緻でなく鷹揚である。しかし、天冠の金具の造りは精緻に出来ている。正面中央の輪宝を中心にして左右対称に、蓮台の上に光背付き宝珠を戴き、多くの宝石を垂らしている。左右の天冠帯も立派である。ただ、左顔面を飾る宝石の欠損が惜しまれる。

 顔はやや面長、彫眼、白毫に水晶を用いている。鼻が大きくて短く、鼻の下が長いのが特徴。金箔はほとんど]R落しているが、彫りの深みに少量残っていて往時をしのばせる。

欠損前の観音像 しかし、胸飾の金泊はそのまま残っていて美しい。胸飾から下腹部に至る三筋の瓔珞は、欠損もなく造りが実にあざやかである。

 菩薩特有の左手に持つ水瓶が腐食欠損し、左手の第三・四指が破損している。加えて、左右の足の甲の腐食も進んでいる。当観音は、腐食の傷の痛みに耐えられるだけでなく、庵寺当時の雨漏りにより、蓮華台座も舟形光背も破損して、今は台座の蓮華部を残すのみとなっている。菩薩として身のまわりを装う身嗜みもできなくなっている。

 市内の指定文化財のうち、十一面観音像はこの像のみで貴重である。


文化的景観
埋蔵文化財