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市指定有形文化財(彫刻)
木造獅子頭 一頭
この獅子頭は、ヒノキ材で彫られた高さ二〇cm、幅三二cm、奥行き四一cmの扁平な蛇頭形で、後頭部は開放している。下顎はスギ板の前端に歯を彫ったもので開閉に造られている。
作風は彫が深く豪快。盛り上がった大きな鼻は前に出っ張り、大きく丸い目は彫眼で表現されている。頬と眉間が隆起し、眉は後方に折れ曲がっている。口は両脇に大きく開き、大きい上下の歯をむき出している。脱着式の小さく軽い耳は、面全体のアクセントとなっている。
眉・下顎・頬・後頭端部につけ毛用の穴があり、各部に黒の塗装痕が見える。彫り面はやや粗彫りであるが、内刳りは滑らかである。一方、彫りの肉厚は後頭部を厚くし顔部を薄くしている。
保存状態は顔面など肉薄部分に風化による穴開きがあるほか、頭上に八角の冠らしい部材の欠損や片方の耳に虫食いがあるものの、材質はほぼ健全で原形を保っている。
高田八幡神社は、天文一三(一五四四)年一〇月、津島領主越智朝臣通孝が再建し、さらに三八年後の天正一〇(一五八二)年一二月には、越智朝臣通顕が再建しているので、この獅子頭も当時に寄進されたものではないかとみられている。
獅子頭は伎楽演奏の時に用いられた仮面で、現在も使われている獅子頭の姿は、奈良時代前期の伎楽面である。