ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 新宇和島の自然と文化 > 市指定 黒柿

本文

市指定 黒柿

印刷用ページを表示する 記事ID:0002366 更新日:2015年7月1日更新

市指定天然記念物

黒柿黒柿

  • 所在地 丸穂 辰野川沿い
  • 所有者 宇和島市
  • 指定日 昭和四三年一月九日

 宇和島市街地の東部を流れる辰野川沿いには寺が多い。黒柿は潮音寺、選仏寺、西江寺の並ぶこの河畔に生えている。

 昭和二三年四月五日の日刊新聞(南海タイムス)によると、「川辺の水車小屋があったところのすぐ上側に、五本の黒柿が静かにたたずんでいる(松本リン一)」とある。

 大正六年頃書かれた『郷土の史跡名勝天然記念物』というプリントには、「七本の黒柿があり、所有者は北宇和郡宇和島町」と記されている。

 この黒柿、もとは七本であったが、昭和二〇年代の台風でそのうちの二本が倒れ、現在は五本が残っている。これらのうち最大のものは、幹回り一九四cm、高さ一五mである。

 これらの黒柿は江戸時代、山林監督の役人が植えたという説、さらに、小笠原兼助の父の植樹とも伝えられているが定かではない。

 カキ(柿)の仲間で、黒くて硬い心材のものを、古くから黒柿と呼んでいる。辰野川べりの黒柿はカキノキ科のリュウキュウマメガキ(琉球豆柿)で、樹皮は普通の柿に比べ黒みがかっている。この柿は暖地の山間部に自生する落葉高木である。宇和島市の山間部にも生えているが個体数は極めて少ない。分布は本州(関東以西)・四国・九州・沖縄・中国中南部・台湾である。

 宇和島地方にはこれに近縁のトキワガキ(常盤柿)も分布しており、これは常緑高木である。

 黒柿(琉球豆柿)は六月頃、黄白色の小花を多数つける。雌雄異株で、雌株は球形の果実(直径約二cm)を結ぶ。この果実は渋いので食用にはならないが、柿渋は、網、釣り糸、和紙などの塗布に、用途が広い。材は非常に硬く、器具用、建築用として珍重される。

 辰野川べりの黒柿周辺には雑木や種々の植物が地面を覆っている。アラカシ・ムクノキ・アカメガシワなどの広葉樹、メダケ・ホウライチク・オカメザサなどの竹類が勢力を張る。クズ・ヤブガラシ・ツヅラフジがいたるところに長いつるをからませ、ときに黒柿の幹に巻きつくものもある。

 黒柿(琉球豆柿)は、愛媛県下では非常に珍しい。天然記念物のものは宇和島市以外に西予市城川町魚成にある。これは一本の黒柿で、西予市で文化財に指定され、個人の所有である。本種も川べりに生えており、つねに水害の恐怖にさらされている。

 宇和島市内辰野川べりの「五本の黒柿」は、他に類を見ない貴重な価値ある存在である。


文化的景観
埋蔵文化財