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県指定天然記念物
二重柿 一本
津島町岩淵、満願寺の境内に一本の柿の木がある。根回り二・八m、幹周り一・二m、高さ一〇mに達する小形のしぶ柿で、柿の実の内部にもまた果実を生じ、「二重柿」とか「子持ち柿」の名で呼ばれている。
二重柿は昔から子宝に恵まれると信じられ、全国からこの柿で作られた干し柿の申し込みが絶えない。この柿の実の干し柿は満願寺で丹誠込めて作りあげられるのである。
二重柿は大正一三(一九二四)年に発表された「愛媛県史跡名勝天然記念物報告書」にも詳細な記述が残る。このような柿は全国的にも非常に珍しい。旧津島町章はこの柿を図案化している。
二重柿の縁起にはいろいろな言い伝えがある。「弘法大師行脚のおり、杖を立てて置かれたのが芽を出し、根を張り、枝葉を茂らせ、実をつけるまでに至った。今に残る二重柿がそれだ」という伝説はたいへん有名である。そして「世の中を仲睦じく親と子が二重の柿にそれを知るべし」の歌とともに伝承されている。
二重柿は江戸時代から現在に至るまでの長期間を生き抜いてきたが、かなり老
齢化しており、主幹部の腐朽が進行している。平成一九年四月には、樹木医による綿密な調査・処置が行われた。その後も寺の住職や関係者によって土壌改良等あらゆる保全対策が行われてきたが、現在もカミキリ虫の穿孔とキクイムシによる穿孔が進行している様子である。また、二重柿の周辺にはビャクシンの根が伸長して、悪影響を及ぼしており、病虫害防除の処置等、急務を要している。