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県指定天然記念物
ハマユウ
天然記念物のハマユウは沖の島に群生する。この島は、宇和海に浮かぶ日振島の北〇・五kmに位置する。沖の島は面積〇・一八平方kmの無人島。もともと四つの島であったが砂州でつながり、細長い島(長さ約一km)となった。最高点は島の西部の小山で、高さ七一m。東部にある丘(標高三三m)の頂上にはデラ台風(昭和二四年六月)による遭難者(一〇六名)の慰霊碑が建つ。
島の処々に海食崖があり、奇岩の林立する景観は一見の価値がある。地質は中生代上部白亜紀の四万十層群に属し、砂岩・頁岩の互層が美しい縞模様を描く。
沖の島のすぐ東隣には「竹が島」があり、両島とも、足摺宇和海国立公園の特別保護地区内にある。周辺の海域は海岸生物の宝庫でもある。
この一帯は暖地海岸性植物が群落をつくっている。その主役となるのがハマユウである。代表的な群落地は島の東部にある海浜である。現在、五千株を超えるハマユウが生育し県下随一である。地域住民や宇和海中学校生徒(現在は統合されて城南中学校)による害虫(ハマオモトヨトウ…ガ類)の駆除、苗の移植、ゴミ掃除など徹底した保護活動によって、年により増減はあるが、今のところ安定した生育状態が続いている。
ハマユウ(浜木綿)はヒガンバナ科の多年草で別名ハマオモト(浜万年青)ともいう。花は白く香りがある。開花期は七~九月。愛媛県下では南予地方の沿岸部に自生している。全国的には、本州(関東以西)・四国・九州・沖縄に分布する。
沖の島は、小島のわりには植物相が豊かである。ハマユウ以外にも種々の海浜植物が自生する。
砂地には、コウボウムギ・ケカモノハシ・ハマダイコン・ハマヒルガオ・ハマエンドウ・ハマボウフウ・ハマグルマ・ソナレノギク・ハマカンゾウ・ハマゴウなどが生えている。
山すそでは、クルマバアカネ・ナミキソウ・イヨカズラ・ハマウド・ハチジョウススキ・ハマナタマメ・クサスギカズラなどが見られる。
海岸の岩場には、ハマボッス・カワラヨモギ・ソナレムグラ・ハマナデシコ・タイトゴメ・ボタンボウフウ・アゼトウナなどが生育し、岩のすき間や岩上に根を張っている。
沖の島は、ウバメガシ・ハマビワ・マサキ・トベラ・アコウ・シャリンバイなどの常緑広葉樹を主体に、ハマグワ・アカメガシワなどの落葉広葉樹の混じる樹林で構成されている。